R&Bのスーパースター・ビヨンセがカントリー音楽を歌った理由。【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】
ビヨンセ「Texas Hold ’Em」
R&Bのスーパースターがカントリー音楽を歌った理由。
グラミー賞の歴代最多受賞記録保持者であるスーパースター、ビヨンセがカントリーミュージックの新曲「Texas Hold ’Em」と「16 Carriages」を同時リリース。大きな話題を集めるなか、「Texas Hold ’Em」が黒人女性アーティストの楽曲として史上初めて全米カントリーチャート1位を獲得しました。
デビュー以来R&Bを指向してきたビヨンセが、あえてカントリーの曲を歌った理由。その背景にあるのは、黒人コミュニティを代表する彼女の強固な使命感です。
一般的に白人由来のイメージが強いカントリーは、実は1920年代にイギリス系移民がアメリカに持ち込んだ民謡と黒人のゴスペルやブルースが融合して生まれた音楽。カントリーの象徴的な楽器のひとつ、バンジョーも黒人文化が起源です。
ビヨンセが今回の新曲で目的としているのは、黒人が成り立ちに関与しながらもその事実が忘れ去られてしまったカントリーのルーツを白日の下に晒すこと。一部の保守的なカントリー専門ラジオ局は早速彼女の曲のオンエアを拒否していますが、きっとビヨンセはこうした反応も織り込み済みでしょう。
「Texas Hold ’Em」はカントリーチャートを制したのち、総合チャートでも1位を記録。ビヨンセの闘いはまだ始まったばかりですが、彼女の問題提起が従来のカントリーの認識に多大な影響を及ぼすことになるのは間違いなさそうです。
『クロワッサン』1115号より
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