くらし

新NISAで何をどう買う? プロに聞く、タイプ別活用アドバイス。

投資を敬遠してきた人もNISAが気になる今日この頃。
積み立て投資の意味がわかれば、もう怖くありません。
  • イラストレーション・とつかみさこ 構成&文・黒澤 彩

投資とは、お金を育てることです

投資という言葉から思い浮かぶイメージは、どんなものだろう?

「何やら機敏でアグレッシブな行動を思い起こさせますよね。そのせいで抵抗感がある人も多いのではないでしょうか。でも、これからお伝えする投資の本質は、それとは正反対。今、抱いているイメージを、ぐるりとひっくり返してほしいのです」と話すのは、多くの人に投資のアドバイスをしてきたカン・チュンドさん。

「投資とは、お金を育てること。畑に苗木を植えて、ときどき世話をしてやりながら実がなるまで気長に待つようなことです」

たとえば、あなたが畑(=元手)を所有していたとしよう。日本人の多くはそこに何も植えず、畑を他人(=銀行)に預けてしまう。せっかくいい土があるのに、その畑から収穫できる実りはない。ならば、自分で種を蒔くなり苗を植えるなりして何か育ててみたほうがいいのでは? それが投資をするということだ。

「うまく育つかどうかわからない不確実な部分もありますが、実がなったときの喜びは大きなものです。もし畑を他人任せにしていたら、その喜びは味わえません

なんでも育つには時間がかかる。植えたらあっというまに実がなる木などないのと同じように、お金も、投資を始めたからといってすぐに増えるわけではない。

「時間をかけることが大切な理由は後ほど。育つまでのあいだ、やることはほとんどありませんよ。地味で凡庸で退屈なのが、投資というものの実際です」

●過去20年間、積み立てで投資していたら?

金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」より作成 全世界株の代表的な指数と同じ値動きの商品に、毎月1万円投資した場合の結果(手数料、税は考慮していない)。初めの5〜6年くらいはあまり増えず、途中で暴落したときには元本割れも。元本が積み上がるにつれ大きく増えていくのがわかる。

老後までの時間がなくても焦らずに

投資は思っていたほどハードルの高いものではなさそう。いえ、でも、やっぱり私は結構です、という人はしなくてもいいかというと、「好き嫌いは言っていられません」とカンさん。

「この先、年金の賦課方式が今までと同じようにはうまく機能しない可能性があります。公的年金の役割が少しずつ縮んでいくとしたら、投資で資産を増やすことが必要。お金持ちになろうとか贅沢しようというのではなく、暮らしを守るために取り組まなければならないと思ってください

50歳前後で始めても、老後に間に合うのだろうか。

「定年退職から逆算すると、50歳だとしたら65歳まであと15年。それ以降も運用は続けられるので、焦る必要はないでしょう」

積み立てをするのは65歳までだとしても、その時点ですべて現金化してはいけない。毎年少しずつ引き出しながら残りの分の運用を続けていくのが、資産の寿命を延ばす方法だ。

65歳で白黒つけなければいけないわけではありません。考えようによっては20年、30年と投資が続くともいえますから、急いでたくさん投資しようなどと思わなくても大丈夫。とはいえ、健全な危機感は持っておきたいですね」

何を買うかより、どう買うかが大切

ひと口に投資といっても、さまざまな金融商品があり、買い方にもバリエーションがある。だが、ここでいう投資の方法はたった一つ。投資信託を、積み立てで、毎月一定額買い続けることだ。

「どんな商品を買うかということの前に、もっと大切なことがあります。それは、どんなふうにお金を入れていくかです」

●値下がりしたら多く買える! 積み立て投資のイメージ。

上の図で説明していこう。毎月、1000円という一定額で、リンゴ(=投資信託)を買い続けた場合、リンゴの価格によって買える数(=口数)も変わる。3カ月後、400円の利益が出た。

「400円プラスになったのはどうしてかな?と振り返ると、2カ月目に安くなったことでたくさん買えて、3カ月目にまた値上がりしたからですよね。安いときにたくさん買えることが、積み立て定額投資の最大のポイントです」

リンゴを投資信託に戻して表現を変えるなら、2カ月目に暴落したことになる。◯◯ショックのような大きなできごとが起きたのかもしれない。すると多くの人は、慌てて損切りしようと売却してしまったりするのだという。

「不思議なことに、私たち人間はリンゴを買うときと投資信託を買うときとで、まったく異なるリアクションをしがちです。リンゴが半額になっていたらうれしいのに、投資信託が暴落したらパニックになり、もうだめだ、もう嫌だ、と思ってしまうのです

ここで踏みとどまれるかどうかが、お金をコツコツ育てていける人とそうでない人との分かれ道。

「株式などのマーケットは欲望と恐怖心の塊ですから、いい時期もあれば悪い時期もあります。2024年からの数年間が、市場としては悪い時期になったとしても、それが投資の失敗になるとはかぎりません。図のように、リンゴが600円にならなくても利益は出るからです。時間をかけて毎月積み立てていく買い方がいかに大切か、わかりますよね」

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