親の介護が現実味を帯びてきた年代になっても、「まだ元気だから」「何から手をつけていいか分からない」と、先延ばしにしてしまうのはよくある話。
でも、心身に余裕がある平時に一歩進めておけば、実際に介護が必要になったときに、精神面でも金銭面でも対応しやすい状態で迎えられる、と芸人の安藤なつさん。実はボランティアも含めると、約20年ほど介護職に携わっていた介護現場の経験者だ。
「これまで何も考えずにきて、急に介護が必要な場面に直面すると、誰だって焦りますよね。でも切羽詰まった状況で判断すると、精神的に滅入るし、良い判断もできなかったり……。寝坊すると忘れ物をしたり、失敗してしまうのと一緒だと思います」
親の介護と向き合う前に、心構えとして何より知っておいてほしいと安藤さんが思うのが、介護は子どもが背負うべきもの、という考えをやめること。
「『親を預けるのは気が引ける』『子どもがタダでやるべき』『親のこうした姿を見られたくない』と閉鎖的な考えに陥る人も多いですよね。でも、身内同士だからこそ難しい点もたくさんあります。家族が家族をみる場合と、他人が他人をみる場合とでは、精神的な負荷だけでも全然違います。元気だった親が弱っていく姿を見るのは誰でもショックだし、思うように動いてくれないと、つらく当たってしまうこともあるでしょう。イライラした状態でケアするよりプロに任せるほうが、親子双方にとってよほどいい場合もあります」