くらし

「着物はピシッと、きれいに着たい。美しい着物姿はカッコイイと思います。」料理家・荒木典子さんの着物の時間。

  • 撮影・青木和義 ヘア&メイク・高松由佳 着付け・小田桐はるみ 文・大澤はつ江 撮影協力・YYARTS

色無地を名古屋帯でカジュアルに。仰々しくならない着こなしが好きです。

「この着物は20年ほど前に母から譲り受けたものです。私の七五三や小学校の授業参観に着ていたような気がします。母と祖母は着物が好きでたくさん譲り受けました。でも、サイズが合わないものもあるので、少しずつ直しています。枚数があり、ちょっと大変(笑)」
と料理家の荒木典子さん。雲取りに菊の地紋が織り出された一つ紋の色無地は白に近いクリーム色。そこにサーモンピンクの名古屋帯を合わせた装いは、かわいらしさのなかにも大人っぽさが感じられる。

「母が結婚式で締めた帯で着物も 同柄の鶴。私も友人の結婚式をはじめ、今も大切に締めています」

「八掛(はっかけ)(裾まわし)と袖の裏地がミントグリーンなんですよ。物を取ったり、歩くとちらりと見えるんです。そこが母のおしゃれポイントなんだと思います」

色無地の一つ紋といえば袋帯を締めれば格が訪問着に匹敵するといわれ、式典などにも重宝する着物だが、
「今回はカジュアルに装いたかったので知人から譲られた縮緬(ちりめん)の名古屋帯を合わせました。甘くなりすぎない色と柄で、お気に入りのコーディネイトです」

荒木さんが着物に親しむようになったのは母や祖母の影響もあるが、30歳の頃に知人から言われた「40代になったら着物を着るといいわよ」という一言だった。

「たぶん、着物が似合う年代よ、という意味なのだと思います。いろいろな経験を積んで内面的にも充実してくる年代だからこそ、着物をきれいに着こなせるかもと思い、食事会やパーティー、イベントなどに積極的に着物を着るようになりました」

さらに和の習い事にも興味がわいた荒木さん。現在、習っているのは「書道」「笛」「お茶」「日本舞踊」。「書道」が一番長く、「笛」もずっと続けている。

「邦楽の楽器を習いたいな、と思っていました。三味線を習いたかったのでお教室を探していたら、たまたま福原寛(ふくはらかん)さん(福原流笛方)が篠笛の体験会をされることがわかり。参加してみたところ最初の一息で音が出たんです。音はなかなか出ないと聞いていたので、出たことがうれしくて、これならできるかもと思ったんですね。気がついたら10年以上になりました」

臙脂色の菊がサーモンピンクによく映える。「紬などに合わせると、また違う印象になり、重宝しています」

稽古は洋服だが、発表会などはもちろん着物。

「舞台のセンターで、ほかの鳴り物の方や三味線、唄の方を従えて(笑)。邦楽は対面ではなく、全員前を向いて演奏するので自分だけが頼り。何度経験してもドキドキします」

ほかにも20代の頃からお茶を習っている。

「若い頃は、お初釜には振袖で席入りすることが多かったです。母が結婚式で締めたグリーン地に鶴(右上)の華やかな袋帯に、揃いの鶴の振袖を合わせてお点前をしたことも。10年ほど前からお茶のお稽古を再開したので、お茶会に出席することが多いですね。そうそう最近、日本舞踊を習い始め、お稽古で浴衣を着ることが多くなりました」

着付けは本を見て勉強したという荒木さんだが、常に心がけていることがある。

「自己流なので今まで失敗もありました。帯がうまく結べず、とりあえず締めてお茶会の席に行き、先輩方に直してもらったことも。着物はきれいに着たいんです。特に衿の合わせはピシッとさせ、もったりとした感じになるのは避けるように気をつけています。
半衿と足袋は白。白の美しさは格別です。正統な着物姿が好きなんです。それと日舞を習うようになって日常での動作が気になるようになりました。踊りの先生の、手先まで神経の行き届いた所作の美しさは憧れです」

紬よりも染めのものを着る機会が多いが、

「もちろん紬も大好きです。大島紬の光沢感や結城紬の温かみは魅力的。だからこそ、もう少し年を重ねたときに楽しみたいですね」

荒木典子

荒木典子 さん (あらき・のりこ)

料理家

神戸生まれの京都育ち。大学卒業後フランスへ留学。帰国後、調理師学校で料理の基礎を学ぶ。東京の出版社で料理本の編集などに携わり、その後、料理家として独立。シンプルだが季節感のあるレシピが人気。著書に『旬の和ごはん』(講談社)、『いちばんくわしい 基本のおせち料理』(成美堂出版)など多数。

『クロワッサン』1107号より

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