くらし

英国アイドルデュオ、ワム!の真の実力【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】

ワム!『Everything She Wants』

デビュー40周年を機に問う、英国アイドルデュオの真の実力。

80年代に一世を風靡した英国のポップデュオ、ジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーからなるワム!がアルバムデビューから40周年を迎えました。これを記念して、Netflixでは初の長編ドキュメンタリーが公開。約4年の短くも濃密な活動が一望できるシングル集もリリースされています。

絶頂期にはマクセル社のCMに出演して日本のお茶の間にもまぶしい笑顔を振りまいていたワム!。彼らはアイドル的なイメージが強いかもしれませんが、1982年発表のデビュー曲「Wham Rap!」では失業問題を題材にして若者たちが抱える鬱屈を代弁。音楽的にもまだ世間に浸透し始めて間もなかったラップを取り入れたりと、登場時からブラックミュージックの新しい動向に敏感な反応を示していました。

そんななか、ボーカルのジョージのブラックミュージックに寄せる憧憬が見事に結実したのが、当時のコンテンポラリーなR&Bサウンドを昇華した「Everything She Wants」。1984年の全米ナンバーワンヒットです。

この曲に関しては「90年代に入ってから最先端のヒップホップのクラブで流しても好意的に受け止められた数少ない白人アーティストの曲」との現場DJの証言もあるほどで、ジョージがソロ転向後も歌い続けた事実上唯一のワム!作品であるのも納得。そのモダンなフォルムは、発売から約40年を経た現在もなお有効です。

上から、ワム!2作目の1984年のアルバム『Make It Big』、「Everything She Wants」収録。1983年のアルバム『FAN TASTIC』、「Wham Rap!」収録。今年リリースされたシングル曲集『THE Singles:Echoes from the Edge of Heaven』。

高橋芳朗 さん (たかはし・よしあき)

音楽ジャーナリスト

著書に『ディス・イズ・アメリカ「トランプ時代」のポップミュージック』(スモール出版)など。

『クロワッサン』1101号より

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