年金、こんなときどうする? プロに聞く7つのQ&A。
イラストレーション・佐々木一澄 文・黒澤 彩
Q1.年金が思ったより少ない! 貯金も足りない! 今から老後資金づくりはできますか?
年金は現役時代の収入を100%保障するものではなく、足りない分を貯蓄でカバーするのはいつの時代も同じです。なので、現役時代にとにかく貯めましょう!
「どうやって」貯めるかではなくて、まずは1年で〇万円貯めるという金額目標を明確に。厚生年金に加入しながら65歳まで働くなら、貯金プラスiDeCoを利用してもいいでしょう。
女性の場合、再雇用で働くことを躊躇する人もいるようですが、できるだけ長く働くことは必須。もし再雇用以外のセカンドキャリアを検討しているなら、50代のうちに働きながら準備をすること。原則として、老後資金が足りなければ働くのです。(深田さん)
Q2.基礎年金の未納期間がありました。 追加でこれから納められますか?
学生時代に免除を受けていたり、転職の隙間に加入届をしていなかったりして、基礎年金が満額にならない人もいます。あとで払いたいと思っても、好きなタイミングで追納することはできません。
でも、60歳以降に追加で納めるチャンスがあります。まず、60歳以降も厚生年金に加入して働くことで、基礎年金の納付額が満額になるまで加入期間を延ばすことができます。
また、60歳以降は厚生年金に加入せずリタイアする人や自営業の人には「任意加入」という制度があります。60〜65歳の人で、老齢基礎年金の繰り上げ受給をしていないといった条件を満たせば、任意で国民年金に加入できます。
Q3. 60歳以降も年金保険料を払う可能性ってありますか?
Q2の答えと重なるところもありますが、60歳以降も会社の再雇用などで働くなら、厚生年金に加入して引き続き保険料を払うことになります。国民年金だけの人は、60歳で40年分を払い終えていれば60歳以降に払うことはありません。
60歳を過ぎても年金保険料を払うなんて嫌だと思われるかもしれませんが、加入期間が長くなればそれだけ65歳以降にもらえる年金額が増えていくので、いいことばかり。ちっとも損ではありませんよ。仮に、60〜65歳まで厚生年金に加入して働き、その間の平均月収が20万円だとすると、受け取れる年金額は年間6万5000円ほど増える計算です。
Q4.60歳になったら、年金を繰り上げ受給しても いいですか?
年金を65歳よりはやくもらうことを繰り上げと言います。結論としては、ダメです! 検討しないこと! 繰り上げを勧める専門家はまずいません。将来、どれだけ長生きしても減額された年金額が固定されてしまうことになり、後で「しまった……」と思っても、もう年金額を増やすことはできないのです。
Q5.年金の繰り下げ受給ってどのくらい得なのでしょうか?
65歳以降、1カ月繰り下げるごとに0.7%増額され、最長で75歳まで繰り下げられます。
年金額が増えるのは大きなメリットですが、すべての人に向いているわけではありません。たとえば、夫の年金を繰り下げしたとしても、夫の死後に妻がもらえる遺族年金の額は65歳時点のものなので注意しましょう。また、年金額が増えれば健康保険・介護保険の保険料も高くなるので、手取りは額面と同じ率では増えません。
ただ女性は、年金額が男性より少ない傾向があり、長生きする可能性も高いので、繰り下げするのも一案です。夫婦なら夫だけ65歳から受給し、貯蓄を取り崩さずに生活できるなら、妻の分は繰り下げてもいいのではないでしょうか。
夫婦にしてもシングルにしても、繰り下げ受給をしてもいいケースは、ほかに収入があって収支トントンの生活をできる場合に限られます。
Q6.年金をもらいながら働くと、年金額が減るって本当ですか?
60歳以降も厚生年金に加入して働く人は、被保険者であると同時に、一定年齢になると老齢厚生年金を受け取ります(繰り下げした場合を除いて)。在職中に受け取る年金は「在職老齢年金」と呼ばれ、年金の月額と賃金の合計額によっては、年金額が少し調整されます。
ただ、給与と厚生年金との合計が月48万円以下なら年金は全額支給されるので、ほとんどの人は減額されることがないのではないでしょうか。もし該当したとしても、大幅に減ってしまうわけではなく、働きながら年金も受け取ることは充分に可能です。心配ご無用!
Q7.夫が亡くなったあと、妻の年金額はどう変わりますか?
妻が65歳以上の場合、(1)夫の厚生年金の4分の3、(2)夫と妻の厚生年金の半分ずつ、(3)妻の厚生年金、の3つのうち最大額が自動的に選ばれます(年金額ではなく厚生年金部分だけ)。
専業主婦が長かった人だと(1)になり、妻の基礎年金に加え、夫の厚生年金の4分の3を遺族年金として受け取れます。共働きであまり収入差がない夫婦だと遺族年金は少ないものの、妻の年金との合計額は(1)より多めです。いずれにしても、どちらかが亡くなると受け取れる年金は1人分になるので、夫婦揃って長生きするのが得ですね。
『クロワッサン』1096号より
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