晩酌は角ハイボール一辺倒! 作家の山口恵以子さんのジャンルレスなおつまみ。
さあみなさん、お酒の準備はととのいましたか? では、ご一緒に、カンパ〜イ!!
撮影・青木和義 文・石飛カノ
小説の世界観を彷彿とさせる、和洋中のつまみとハイボールで晩酌。
50歳を過ぎてからの晩酌は角ハイボール一辺倒、という山口恵以子さん。
「それまでは日本酒派だったんですけど、50歳ごろから翌朝の目覚めがすっきり爽やかとはいかなくなって。人から“蒸留酒に替えれば大丈夫”という話を聞いて、それからは基本的に“蒸留生活”です」
ワインや日本酒などの醸造酒とは異なり、加熱蒸留したウイスキーや焼酎といった蒸留酒は不純物が少なく二日酔いしにくいとされている。以来、700mlのウイスキーを3日に1本空けるペースで飲んでも、翌朝の体調に響くことはないという。
自宅で晩酌をするようになったのは、44歳で丸の内新聞事業協同組合の社員食堂で働くようになってから。
「それまではイタリアンだフレンチだと外食をすることが多かったんですけど、食堂で働くようになってからは家を出るのが朝5時前というライフスタイルに。3時半には起きなきゃいけないので外食ができなくなり、それで家で飲むようになったんです。この20年間で飲まなかった日は、3年前に急性虫垂炎で入院手術をした4日間だけですね(笑)」
晩酌がスタートするのは仕事が終わった夜7時ごろ。締め切りに追われているときは別として、だいたい朝9時ごろから執筆を始め、日が暮れるまでは仕事に集中、区切りがついたところでつまみの用意に取り掛かる。
「台所ですべての調理を済ませて出来上がったらリビングのテーブルに運んで座って、さあスタート。私、お酒を飲み始めるまではけっこうこまめに働くんですけど、お酒を飲んだら死んだものと思ってね、とよく周りの人に言うんです。だから、準備万端整えてから晩酌を始めます」
なるほど。そのオンからオフへの切り替え方、お見事です。
ハイボールに合わせるのは、ジャンルレスのつまみ。
さて、今日の酒肴は何ですか?
「季節野菜のゼリー寄せと砂肝の中華風、この2品は作り置きです。あとはパパッと作れる炒め物を一品。今日はキャベツのペペロンチーノです」
フライパンにキャベツ半玉を手でちぎり入れ、オリーブオイルに塩、ガーリック、唐辛子、しらすを加えてざっくり混ぜながら炒め合わせ、仕上げに日本酒を投入。まんべんなく混ぜたら出来上がり。さすが、“元・食堂のおばちゃん”、手早い!
「これはイタリア料理店のシェフに教わったレシピ。砂肝の中華風はテレビで見て美味しそうだなと思ったもので、ゼリー寄せは亡くなった母が好きな一品でした。この3品の組み合わせは、野菜がたくさん摂れるので気に入ってます」
テーブルにつき、キンキンに凍らせたグラスにウイスキーを注ぎ、炭酸水で割る。味が薄まってしまうことを嫌い、氷は入れない。
「泡のシュワシュワ感が大好き。外食するときもスパークリングワインやシャンパンを好んで飲みます。泡が口をさっぱりさせて油を切ってくれるので、つまみを選ばないんですよね。今日もゼリー寄せは和食、キャベツはイタリアン、砂肝は中華風。和洋中、どんなつまみにも合うんです」
食堂小説シリーズを手がけているだけに、つまみのレパートリーはもしや無限?
「以前は食堂で出していたものや母に教わった料理などを小説に書いてましたが、さすがにもう追いつきません。小説の舞台になる季節の旬の食材をピックアップして、ネットやレシピ本を参考にしています。経験上、材料と作り方を見ればだいたい美味しいかどうかは分かりますが、意外な組み合わせを発見することもありますね」
最近の発見は薄切りにした梨に鰯の刺身をのせ、醤油、酒、みりんを同量合わせたたれをかけたひと皿。
「美味しかったので、思わず『ゆうれい居酒屋』に書いてしまいました(笑)」
小説の世界観そのままの酒肴と、キリリとしたハイボール。これが山口流の本日の終い方。
『クロワッサン』1097号より
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