坂本龍一がレゲエを聴き込んだ理由とは?【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】
坂本龍一&カクトウギセッション『サマー・ナーヴス』
直腸がんで闘病生活を送っていた音楽家の坂本龍一が3月28日に逝去しました。71歳でした。
坂本は「教授」のニックネームからもうかがえるように幼いころからクラシック音楽を中心に正統な音楽教育を受けた経歴がありますが、イエロー・マジック・オーケストラ結成直前の1970年代後半、伝統的な知識だけで活動を続けていくには難しいと悟ってそれまで勉強してきたことを一旦忘れようと努めたそうです。
それにあたって坂本は、当時欧米のポップミュージックで取り入れられる機会が増えていたジャマイカ発祥のレゲエに着目。当初は強い抵抗感を覚えていたものの、2年もの歳月を費やして聴き込んでいくことによりその深遠にたどり着きます。
「レゲエは単純な音楽だが、その音の森の中には驚くほど複雑な風景が広がっていることを知った。だが、その複雑さは決してたやすくは姿を現さない」
そんな坂本がレゲエの影響を大々的に打ち出した最初の作品が、1979年に「坂本龍一&カクトウギセッション」として発表したアルバム『サマー・ナーヴス』。これは坂本自らレコード会社に提案して実現した企画でした。
以降も坂本は『音楽図鑑』(1984年)や『sweet revenge』(1994年)などでレゲエを導入。自分の知識に疑いの目を向けた彼はレゲエを通じてなにをつかんだのか、その変遷を辿ってみるのも一興かもしれません。
『クロワッサン』1095号より
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