「何を大切に生きていきたいかを問う」住まいの見直し術と、家の廻りをよくする7つの心得。
子の独立、自身の働き方の変化など、ライフステージが変わるこの時期に、家のあり方も一度俯瞰してみよう。
これからの自分と家族に心地よく、快適な生活を実現する住まいとは?
多くの実例からそのヒントを見つけて。
撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 文・松本あかね
【家の巡りをよくする7つの心得。】
1.管理できるモノの適量を保つ。
「モノを持つにはスペースも必要だし、お金もかかる。その上、管理エネルギーがかかってきます。便利な家電も手入れをしないと使えないし、食品のストックをたくさん持てば、賞味期限も気になります」
一つ一つの置き場所を定めたら、その枠からはみ出さない量を保つと決めれば、把握も管理もラクになる。
「何をどのくらい残すか」の判断が難しい家族の思い出の品は、キッチンのパントリーに一切を収めている。「アルバムも41冊分を5冊にまとめたら、家族も繰り返し見返すようになりました」
2.小さな模様替えを楽しむ。
リビングの壁には油絵を飾り、季節ごとに掛け替えて楽しんでいる。「美術教師をしている弟が家族の節目ごとに描いてくれたものを飾っています」
春には静物画、夏には涼しげなヨットと海の風景画など。
「ドアから入ったときの正面だから、部屋の印象を決める重要なポイントです」。大がかりなことをしなくても、小さな変化が目を楽しませてくれる。
3.モノを買う前に手を動かして工夫する。
「片づかない人は手の動かない人が多い」と井田さん。買い物がクリック一つで済む時代、不便をモノで解決しようとする傾向に拍車がかかったようだとも。
しかし必要なものがないときこそ、工夫できるものはないか、手を動かしながら考える。
「最初から一番いい方法が浮かばなくても、その時間こそ楽しいんですよ」。「三度不自由して買う」は座右の銘。
4.家計は夫婦で把握する。
住み替えの際、つねに家計簿持参で不動産屋と交渉してきたという井田さん。
「いくらまでなら出せる」ことが明快なら価格交渉もスムーズ。2世帯住宅の購入にあたり、自宅を売却するという決断が素早くできたのも、夫婦で家計の数字を共有してきたおかげ。
「雰囲気でなく、数字を真ん中に話し合えば、冷静に話し合いができますよ」
5.無駄のない動線を考える。
ダイニングテーブルで仕事をするため、家庭事務にまつわる書類やパソコン、文房具などは食器棚の引き出しに一括して収納。
「大事なものはすべてここにあるとわかっていることがラク。夫との情報共有もスムーズです」
玄関の引き出し家具には1人1段を割り当て、それぞれ出かける際に必要な小物一式を入れておく。帰宅してすぐ戻すことを習慣にすれば家庭内迷子もなくなる。
モノを探してウロウロする時間とエネルギーのロスをなくす。理に適った動線は頭の中も整理整頓してくれるといえそうだ。
6.家族が使う道具や調味料は一目瞭然に配置。
家事を1人で回すのではなく、家族で回す家にするためには、「聞かなくてもわかる」ことが何より肝要。掃除道具は台所の勝手口近くの壁に7つ道具を掛けてセット。
調味料はラベルを貼った瓶に入れて食器棚脇のラックに。使う場所の近くに、ひと目見てわかるように設置することで、誰でも掃除ができるし、料理ができる環境を作っている。
7.空間こそ、自分へのご褒美。
本棚以外、置き家具のない6畳の和室は実際より広く感じられる。「何も置かないことでフレキシブルに使えます」
まっさらな畳はその心意気の象徴のよう。家の中で一人になれる貴重な場所でもある。夫がランチを作っている間や入浴後に10分ほどストレッチ。
「自分をもてなすことに慣れていなくて。やっと自分の体と向き合う余裕ができました」
『クロワッサン』1090号より