ご利益専門家に教わる、歴の読み方。古の開運ワザの集大成、ここにあり!
知ることが幸運への近道に。
ご利益専門家の藤本宏人さんに教わります。
撮影・安田光優 イラストレーション・佐々木一澄 文・黒澤 彩
【暦の読み方】
日めくりカレンダーに記されているたくさんの暦用語=暦注。基本的な意味を覚えておけば、暦をもっと身近に感じられるはず。
(A)二十四節気(にじゅうしせっき)
一年の太陽の動きを24等分し、季節を表すもの。春夏秋冬の4つに分け、さらにそれぞれを6つに分けて節気と中気を交互に配している。「立春」「夏至」など、現代でもなじみのあるものも多い。
(B)選日(せんじつ)
干支の組み合わせによって吉凶を占うもので、「一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)」もこれの一つ。ほかの暦に含まれない暦注の総称でもあり、引っ越しなど暮らしに根ざした行事の日どりを決めるのに役立てていた。
(C)日の干支
おなじみの「十二支」に、「甲」「乙」など10種類ある「十干(じっかん)」を組み合わせた60種類の「十干十二支」を順番に日に当てはめたもの。祭事の日取りを決めるのに使われ、「土用の丑の日」もこの一つ。
(D)暦注下段
季節や節月と、日の干支の組み合わせによって算出し、吉凶を表すもの。昔のカレンダーの下段に記されていたことから、今もこう呼ばれている。以下に紹介する7つの日は、すべて吉日。
・月徳日
つきとくにち/げつとくにち●その月の徳神がいる日。気持ちや心がいい方向へ変化する。目に見えないことについて思い巡らせることで、いい変化が表れる。
・母倉日
ぼそうにち●天が人を慈しむ日。思いやり、優しさが良縁を引き寄せる日でもあるので、自分がされるとうれしいことを、人にしてあげるよう心がける。
・天恩日
てんおんび/てんおんにち●文字どおり天の恩恵を受けられ、うれしい偶然や想定外のいいことが起こりやすい日。疎遠だった人に連絡をとるタイミングにもいい。
・大明日
だいみょうにち●天が隅々まで照らす日という意味。明るい態度、明るい笑顔が良縁を結ぶ日。自分の表情を意識してみるだけで、いい運気に乗ることができる。
・神吉日
かみよしび/かみよしにち●神に関わること、つまり神社への参拝などにいい日。心で願うことが実現しやすくなる日。自分の願いを確認するのにもふさわしい。
・鬼宿日
きしゅくび/きしゅくにち●「鬼が宿にいて外に出ない日」という意味。不思議な力が強まり、味方をしてくれるので、結果を決めつけずに行動してみると吉。
・天赦日
てんしゃび/てんしゃにち●「天が万物の罪を赦す日」という意味で、暦のなかでも最上の吉日ともいわれる。何か新しいことを始めるのにもいい日。
(E)六曜
現代でもっともよく使われている暦。新月に対応して算出される。14世紀ごろに中国から伝えられ、多くの暦注が廃止された明治時代以降も使うことができたため、定着したと考えられている。
・先負
せんぶ/せんまけ●「先んずれば即ち負ける」なので、先勝とは反対に午後のほうが吉。何事も急いだり慌てたりせずに平静を保つほうがいいとされる。
・赤口
しゃっこう/しゃっく●時間帯では昼ごろのみ吉で、それ以外は凶とされるので婚姻行事などは避ける傾向に。「赤」の字から、火の元に注意すべしともいわれる。
・友引
ともびき●勝負の決着がつかず、よくも悪くもないという意味。時間帯では、朝晩が吉。葬儀を避けるといった俗信は、六曜の意味とは異なる解釈なので要注意。
・大安
たいあん●一日を通して何をするのにもよいとされ、六曜のなかでもっとも縁起のいい日。とくに結婚式、入籍といった婚姻関係の日取りに選ばれることが多い。
・先勝
せんしょう/せんかち●「先んずれば即ち勝つ」という意味。つまり、何事も早く済ませるのが吉とされる日。午前が吉。急用への対応をするにもいいとされている。
・仏滅
ぶつめつ●六曜のなかで凶日とされるが、「いったん滅んで新たになる」との解釈もあり、物事を始めるのにいいとする説も。「仏」とあるが、仏教とは無関係。
日本に伝わる そのほかの古暦。
中国やインドから伝わり、日本で独自に取り入れられた暦はほかにもある。昔、使われていた暦をさらにご紹介。
●十二直(じゅうにちょく)
北斗七星の動きと十二支による方位の組み合わせから算出するもので、「建(たつ)」「除のぞく」など1字で表され、それぞれ良い面も悪い面もあるとされる。江戸時代には「暦中段」とも呼ばれた。
●二十七宿(にじゅうななしゅく)
月の見かけ上の通り道である白道を、27のエリアに等分したもの。東洋占星術の一つで、インドが発祥とされる。日本では江戸時代初期に廃止されたため、暦注として記されていない。
●二十八宿(にじゅうはっしゅく)
東洋占星術で、天の赤道付近にある28星座を基準として天球を28の領域に不均等に分け、その日の月の位置と星座をもとに占うもの。中国発祥なので、二十七宿とは成り立ちが異なる。
●九星(きゅうせい)
1から9までの数字に、7つの色、五行、十干十二支、八掛を組み合わせたもの。「一白水星(いっぱくすいせい)」「九紫火星(きゅうしかせい)」などと表され、九星気学の占いに使われる。星とあるが、星座などの天文とは関係がない。
まったく同じ日は 二つとない。暦の不思議な力。
今の暮らしでは意識することが少なくなった古い暦。その一方で、一粒万倍日など、いくつかの吉日がブームのようにもてはやされる傾向も。
「かつては人々の生活と分かちがたく結びついていた暦について知り、吉日を意識してみるだけでもいいことがあるはずですよ」と教えてくれたのは、ご利益専門家の藤本宏人さん。暦は日本人が1600年以上も使ってきたもので、もとは神仏へ祈念するタイミングなどを決めるのに用いたそう。
「今でも神社の大祭の日などは古い暦をもとに決められますが、江戸時代には一般の人も商いや生活上のさまざまな“ゲン担ぎ”に暦を活用していました。それで実際にうまくいった人が大勢いたからこそ、今に伝わっているのです。せっかく先人たちが残してくれた知恵を知らずにいるのはもったいないですよね」
それにしても、暦注や季節を表すものなど、上に挙げたように暦にはたくさんの種類がある。藤本さんによれば、その日がどういう日なのかは、暦の重なりや関係性によって決まり、まったく同じ縁起の日というのは、二度と巡ってこない。たとえば一粒万倍日でも、他の暦がどうなっているかによって意味合いが多少変わるという。
そうした複雑な読み解きは専門家に任せるとして、私たちが覚えておくべきは吉日に尽きるのだとか。
「縁起のよくない日をわざわざ調べる必要はありません。吉日を知って、気分よく過ごすことが大切です」
『クロワッサン』1084号より