くらし

そもそもお盆とは? お墓参りの正しい手順は? 今こそ知りたい、お盆の作法。

ご先祖さまを大切にしたい気持ちはあっても、なかなか方法がわからないもの。お盆をきっかけに、考えてみましょう。
  • 撮影・黒川ひろみ(物) イラストレーション・村上テツヤ 文・生島典子

「お盆」は、最も身近な神仏であるご先祖さまを大切にする気持ちを表す機会です。

しかし、お盆の正しい迎え方や、日常的なお墓参りの方法など、よく知らないまま過ごしていませんか?  また、実家が遠くにあり、何かと気がかりな人もいるはず。

今回、「亀山若手僧侶の会sanɡa(僧伽–サンガ–)」の皆さんに、私たちが抱えているさまざまな疑問や懸念について答えてもらいました。

いずれも、宗派や地域によって違いがあることが前提ですが、基本的には、ご先祖さまを敬い感謝して、毎日を過ごすことが大切で、こちらから何かをお願いする対象ではないということを理解しておきましょう。

「仏教は、外からもたらされる何か(運のようなもの)を望むものではありません。いいこともあり、時には苦しいこともある人生で、それらをすべて受け入れられる心を持てるようになることが大切だという教えです」

少しでもそんな心境に近づけるように、「ご先祖さまはなぜ大切なのか」というそもそものところから、お墓が遠方にあってもできる供養の方法などを教わりつつ、現実的で無理なく、持続可能なご先祖さまを敬う自分なりの方法を探してみましょう。

お盆とは、そもそも何でしょうか?

仏教のお経の一つ、「盂蘭盆経(うらぼんきょう)」に由来します。お釈迦さまの弟子の目連尊者(もくれんそんじゃ)が、亡き母親が餓鬼道(がきどう)(飢えと渇きに苦しむ世界)に堕ちて苦しんでいる姿を見て、救う方法をお釈迦さまに尋ねたところ、「7月15日に僧侶をたくさん集めて供物をささげ回向(えこう)する(成仏を祈って死者を供養する)ように」と教えられ、実行したところ、母を救い出せたという一説によるものです。

日本では古くからの祖霊信仰と収穫祭が長い時間をかけて混じり合い、特に農耕地域では旧暦の7月である現在の8月に、ご飯や野菜などを盆棚にお供えして先祖を供養する風習となっています。

なぜお盆の行事をするの?

もともとは宗教行事で、自分が今ここにいるのは、これまでにつながり続けてきたたくさんの先祖の命があるためと考えて、親や先祖を敬い感謝の心を持つきっかけにするものです。それぞれの気持ちによるものなので、何をしなければならないというものではありません。

行事の内容は地域・宗派によって異なりますが、農作物の収穫時期にあたることから、一般的には、野菜やご飯などをお供えするところが多く、先祖が帰ってくる道しるべとなるように盆提灯やローソクの灯をともし、供養します。

供養の中には、お墓やお寺にお参りするという行動も含まれています。お盆のお供えのひとつ、精霊馬(キュウリの馬、ナスの牛)には、「先祖が来るときは早く来てもらい、帰りはゆっくり帰ってもらいたい」という、先祖に対する人々の思いや願いが込められています。

精霊馬や盆提灯には、先祖に対する人々の思いや願いが込められている。

迎え火・送り火とは何ですか。ほかにお盆で特に用意するものは?

「迎え火」は、帰ってくるご先祖さまの霊が迷わないよう、目印として火を焚くお盆の始まりの風習です。同様に「送り火」は、お盆の終わりにご先祖さまの霊の帰り道を照らすようにという意味合いのものです。盆提灯やローソクに灯をともして、お盆の迎え火・送り火とします。

お盆で用意するものは特に決まっていません。地域や宗派、その家によって慣習にしていることがあれば、それに従い準備を。仏壇がある家庭ならそこにお供えをする、仏壇がないマンションなどの場合は、簡易的な盆棚をつくって季節の野菜や果物、ご飯などをお供えしましょう。

「迎え火・送り火」専用の、おがらと焙烙(ほうろく)を模したローソク。リビング、玄関など、場所を問わず使える。迎え火・送り火ローソク748円(カメヤマお客様窓口 TEL.0595・82・9837)

お盆はどういう気持ちで行ったらいいですか?

両親、祖父母、さらに膨大な数の先祖の命があり、今の自分が奇跡的に存在しています。「そうして生まれた私の命は尊く、私一人のものではない」と先祖とのつながりを感じて感謝する気持ちが大切です。

仏教では、つながりを感じることは孤独(仏教でいう地獄)から抜け出せる方法とされています。つながりを大事にするために、この時期に家族・親戚が集まる風習もあります。自分と同様に他者の命も尊重する気持ちも大切に。

先祖を10代遡ると2046人、20代遡ると約200万人になる。 多くの命が、今の自分を支えてくれていることに感謝しよう。

なぜ旧盆と新盆があるの?

新暦と旧暦でお盆を行うところがあるため、新暦では7月(新盆)、旧暦では8月(旧盆)になります。地域によって違いますが、大まかな傾向としては、その地域周辺における農業の習慣が大きく影響しているようです。また、同じ地域の中でも、農耕エリアと都市部で細かく異なる場合もあるようです。

お盆は7月13日から16日の4日間とされていますが、夏休みに合わせた8月の月遅れお盆が一般的になってきています。

農耕エリアは、収穫時期の関係などから、8月が多い。
1 2
この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

SHARE

※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

人気記事ランキング

  • 最新
  • 週間
  • 月間