くらし

「海やお寺で心のリリース」、鎌倉で暮らす作家・甘糟りり子さんの運気の整え方。

先の見えにくい世の中で、思考も揺らいでしまいがち。どんなときも清々しく生きているあの人から教わる、自分を調えるヒントとは。
  • 撮影・枦木 功(nomadica) 文・鈴木奈代

大切なのは小さな切り替え。海やお寺で心のリリースを。

1杯のコーヒーで仕事モードへ。●毎朝、仕事前にハンドドリップで丁寧に淹れる。コーヒー豆は地元鎌倉の『カフェ・ヴィヴモンディモンシュ』で購入することが多く、夏の定番はサマーサンバ。愛用のカップは岩﨑龍二によるもの。

鎌倉・稲村ヶ崎の風情ある日本家屋で、母と2人で暮らす甘糟りり子さん。毎朝、起きるとまずは日本茶を淹れる。母のため、そして亡き父の位牌にお供えするためだ。朝食は和食中心、朝晩かき回す自家製の糠漬けも欠かさない。

「ひととおりの家事を終えたら、自分のためにコーヒーを淹れます。お気に入りの豆を挽き、ハンドドリップで丁寧に。『さぁ仕事を始めるぞ』とリズムをつける感じでしょうか」

仕事が煮詰まったら香りで気分転換を。手軽な紙香から香炉で聞くお香まで、気分によって楽しんでいる。

「我が家は古い日本家屋。オーソドックスな和っぽい香りだとやり過ぎになりやすいので、華やかな香りのお香を選ぶことが多いんです」

香りを気持ちのスイッチに。●上・『nana89(ななやく)』(https://nana89.tokyo)の香箱は気軽に本格的なお香を聞けるセット。下・『サンタマリアノヴェッラ』の紙香や『スタジオ ザ ブルーボーイ』のお香も愛用。ガラスのリンゴは鈴木玄太作。

数年前には聞香を体験。とても楽しかったという。その後、友人からお香箱を頂き、心を落ち着かせたい時などに、自宅でも挑戦してみるようになった。

「お客様が来た時に楽しもうと思ったら、友人に『お香は自分のためにたてて』と言われたんです。灰押(はいおさえ)で灰を整える作業が好き。手を動かしていると自然とリラックスできます」

変わらぬ景色に思いを寄せて。●「稲村ヶ崎公園は幼い頃からの遊び場。稲村ヶ崎で育つと新田義貞の伝説を散々聞かされるんですよ(笑)。ここで海を眺めていると、今は亡き大切な人々を思い出します」。愛用の一眼レフで夕陽を撮ることも。

日暮れが近づくと稲村ヶ崎の海へ。

「海岸線を歩いたり走ったり。最後は稲村ヶ崎公園で、沈む夕陽を眺めるのがいつものコース。晴れれば江の島の横に富士山も見えるんですよ。最近、子どもの頃から親しんだこの景色がしみじみいいなと思うようになりました」

コーヒーもお香も海で夕陽を眺めることも、大切な暮らしのルーティンだ。

折にふれ、訪れるのは円覚寺。父の命日と誕生日には墓前に。

亡き父が眠る心の拠りどころ。●お墓のある円覚寺は、四季折々に訪れる、心の拠りどころ。「50歳を過ぎた頃から仏像の美しさに気がつき、それを拝見するのも楽しみ。お墓参りのたびに、人の一生は短いもの、小さいことを気にしても仕方ないと思えます」

「円覚寺にはたくさん建物があるのですが、父が眠る墓地は高台にあって見晴らしがよく、清々しい。訪れるたびに気のいい場所だなと感じます。早朝の坐禅もおすすめです」

そもそも甘糟さん自身は、それほど「運気」を気にしない。落ち込むことがあったら、ジョギングをしたり海で遊んだり。好きな小説を読み、映画を観て別世界へと思いを馳せ、サッと気持ちを切り替えてしまう。

「すべてのことは受け止め方次第、と。悲しいことや嫌なことも経験のひとつ。そこから得ることもある。物書きですから。『いろいろな感情を知るチャンス』と思います」

時には坐禅を。静かに内観し心を調える。

“いろいろあっても「大丈夫」と お寺や海を訪れるたびに思えます”

臨済宗円覚寺派の大本山、円覚寺の御本尊が祀られている仏殿では朝6時から暁天坐禅会を開催。「薄目で坐禅を組むと静かに自分と向き合えて、『大丈夫だ』と思える気がします」

円覚寺
神奈川県鎌倉市山ノ内409
https://www.engakuji.or.jp

甘糟りり子

甘糟りり子 さん (あまかす・りりこ)

作家

横浜生まれ、鎌倉育ち。著書は『鎌倉の家』『鎌倉だから、おいしい。』『バブル、盆に返らず』など多数。読書会「ヨモウカフェ」を主宰。

『クロワッサン』1074号より

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