樋口さんが自宅の建て替えを決心したのは、老朽化が原因だった。
「建ててから35年が経った頃のことです。嵐のような雨が降った日、屋根も天井も通り越して、家じゅうに雨が降ってきました。屋根が飛んだのかと思うほどでしたが、そうではなく、古くなって浸水していたのです」
その頃にはすでに、床の一部も抜けるようになっていた。
「2階の書庫に本や資料が増え放題で……。床がだんだん軋んできて、ついに抜けてしまいました」
雨漏りの修繕には300万円近くかかったという。それでもなんとか修繕で済ませようと思っていたが、耐震性をチェックしたことで気持ちが変わる。
「東日本大震災を機に、耐震基準が厳しくなりました。新しい基準でチェックしてもらったところ、『今この家が立っているのが不思議なくらい。震度5の地震がきたら倒れるでしょう』と言われてしまった。もし倒れて、周囲のお家を潰してしまったら大変。80代半ば、元気でいられる最後の期間かなと思い、一念発起しました」