「おひとりさまで定年、リタイア後の暮らしが心配」、プロのアドバイスは?
イラストレーション・サンダースタジオ 文・一澤ひらり
おひとりさまで、今年ついに定年。 リタイア後の暮らしが心配です。
ユウコさん 59歳/会社員/独身
■ユウコさん家計シート
独身でバブル世代、自由に使えるお金が多いため財布のひもはユルく、食費や雑費を浪費しやすい。
定年時に退職金は出ないが、社内持ち株を売ることになるので約1000万円の収入は期待できる。同時に住宅ローンも完済。
「1カ月の雑費が14万7000円! 白髪ケアに1万6000円ですか?」
ファイナンシャルプランナー、井戸美枝さんの声のトーンが少し上がる。
「白髪ケアで自由診療のクリニックに通い始めたんです。薄毛対策というか、全部で3万円と言われて塗り薬だけにしたんですけど、1年間は続けてくださいとのことで『ひゃ〜!』って」
と、言い訳口調になるのは、今年の秋に定年を迎えるユウコさん。おひとりさまゆえにリタイア後の生活を考えると不安が募る。
「65歳まで雇用延長できるので働くつもりですが、収入は半分ぐらいになってしまいます。住宅ローンは60歳で完済になるので、ギリギリ今の生活は保てるかも。でも、これから貯蓄を増やせるか気がかりで」
ユウコさんの家計シートを見て一番の問題点と井戸さんが指摘するのは、雑費の支出が多すぎるところ。
「通信費が1万円と低いのはよいし、光熱費も抑えられていますが、雑費だけ突出して高いですよね」(井戸さん)
うろたえながらもユウコさんは、
「先月はリモートワークで腰が痛くなってワークチェアを購入したり、実家の母に会うための新幹線代とか、イレギュラーな出費が重なってしまって」
変動が大きい雑費の支出をどう改善するかが節約のカギ、と井戸さん。
「出費の上限を決めるしかないですね。12万円と決めて絶対それは死守する。そうしないと青天井です。大切なのは買いたいものに優先順位をつけること。その範囲内なら自由に使いましょう」
次に問題になるのは?
「食費の7万円も多い。2万円が外食とのことですが、あと5万円は?」
「食材とお酒が半々ぐらいですね。お酒をやめれば節約できるのはわかっているのですが……」(ユウコさん)
「でもそれは楽しみですものね。酒代を減らすというより、食材はまとめ買いすれば1週間1万円ぐらいで抑えられます。レシート読み取りで自動入力される家計簿アプリなどを使えば、支出が把握できてやりくりしやすいです」
実は、ユウコさんには定年後、大学院に進学して女性が働きやすい環境作りに関わりたい、というビジョンがある。井戸さんがアドバイスする。
「雇用保険の教育訓練給付制度を利用すれば、専門実践教育訓練なら最大受講費用の70%まで給付されます。ぜひ活用して夢を実現させてください」
雑費の上限を12万円と決め、必要な優先順位をつけましょう。
『クロワッサン』1062号より