料理研究家・川津幸子さんの、シニア犬と暮らす幸せな日々。
老いに寄り添うことも含め、愛するシニア犬との暮らしは、静かな幸せに満ちている。
撮影・青木和義
健やかに年を重ねるありがたさ。 日々、愛しさが募ります。
川津幸子さん
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小次郎くん(14歳)
料理研究家の川津幸子さんと暮らす、柴犬の小次郎、14歳。和犬特有の気難しさもなく、頃合いを見て撮影をのんびりチェックしにくる様子は、川津さんのアトリエではおなじみの光景だ。
生後間もない小次郎を川津さんが迎えたのは、先代の小太郎を見送って2年半ほど経ったとき。
「小太郎を亡くしたことで、心に開いた穴は本当に大きくて。もう犬と暮らすのは無理かも、と思ったほど」
しかし、縁あって小太郎と同じ柴犬の子犬に出会い、気持ちが動く。そして子犬は小次郎と名づけられ、川津さんの元へやって来た。
「新しい子を迎えて、前の子が開けた穴が埋まるかというとそうじゃありません。でも小次郎を愛することが、小太郎のことを愛し続けることにもなるんだと気づいて。供養って、そういうことなのかもしれない。自分が経験してみて初めてわかる感覚でした」
小太郎の分も、そして小太郎の1年前に亡くなった夫の分も、小次郎は川津さんと息子の家族として、大きな存在となった。撮影隊の接待をこなし、息子の話し相手となり、川津さんの晩酌に付き合う役割は、14歳になったいまももちろん継続中。
加齢にともなう変化を見つけ、日々、こまやかに対応。
小次郎とのそんな変わらない日常がある一方で、歳を重ねたシニア犬ならではの体調変化や健康状態には、きめ細かく留意している。
「自宅の階段の上り下りも、以前より時間がかかるようになりましたね。抱っこして階を移動することも多くなりました。小次郎は夜中におしっこをするときも、律儀にトイレがある2階に上がろうとするんです。でもそれもちょっと大変そうで」
長年の習性を変えるのも難しかろう、と考えて、最近は就寝前の短い散歩を始めた。そこで排泄すれば、朝まで起きなくてもよく、快適。散歩が好きな小次郎には願ったりかなったり。
「幸い食欲は旺盛なので、食事はシニアに合ったバランスで。特別なことはしていないけど、10歳を過ぎて、あれ、ちょっと年とったかなあ?なんて思ってたときに、街でツヤツヤの老犬に出合ってビックリ。そのとき飼い主さんに聞いたクリルオイルをずっと食べさせています」
それのおかげかどうか、小次郎の毛づやは現在も良好。少しだけ先んじて対応することで、シニア犬のQOLはぐんと向上する。
そもそもシニア犬であるということは、その年まで健やかに暮らしている証し。先代犬を病気で亡くした川津さんにとってはなおのこと、小次郎の老いも含めて、無事に年を重ねてきたことが幸せの歴史でもある。
少し飲み過ぎた川津さんにはそっと寄り添い、大丈夫だとわかれば、スッと立ち去っていく。いまではそんな微妙な間合いも通じ合うようになった。
「最近、小次郎が家の中で粗相をすることも増えました。ダメじゃないのーと言いながらそのたび掃除しています。でももし、小次郎がいなくなったら。粗相してもいいよ、だから戻ってきてよ、と思うんでしょうね」
『クロワッサン』1056号より
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