カレーは薬膳の小さな宇宙。使われるスパイス一つひとつに効能があり、使い分ければ健康効果が得られる、と薬膳クリエイターの阿部ららさん。
「とくに、医食同源の考え方から中医学理論に基づいて食材と生薬を組み合せた薬膳を生み出した中国では、スパイスも薬として使われます。生薬としての名前がついていて、スパイスは効果効能が大きなものとして昔から重宝されてきたんですよ」
たとえばカレーの色づけ役のターメリックは生薬ではウコン(漢名は姜黄(きょうおう))と呼ばれ、気と血のめぐりをよくして鎮痛作用がある。刺激的な香りを生むクミンは生薬の名はズーランと言い、消化促進作用があるなど、スパイスがもたらす効能は素晴らしく多彩だ。
「中国には『孜然爆羊肉(ズーランバオヤンロウ)』という家庭料理がありますが、クミンの香りが羊肉の臭みを消して旨味を引き出すんですよ。カレーに使われる多くのスパイスは、どれもパワフルな生薬であるとともに、薬膳料理のベースにもなるのです」