そのひと言が不快にさせる? ビジネスシーンで好印象を生む言い換えレッスン。
イラストレーション・鈴木衣津子 文・嶌 陽子
[ビジネス編]仕事上のトラブル防止には、なるべく具体的に伝えることが肝心。
【×】言いがちフレーズ
近日中にご連絡いたします。
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【◯】好印象フレーズ
◯月◯日までにご連絡いたします。
「人によって〝近日中〟の感覚は違います。こちらが3〜4日と思って使っても、受け取った側は1〜2日と解釈しているかも。こうした行き違いによるトラブルを生まないよう、具体的な日にちを伝えるようにしましょう」(大野さん)
さらにいえば「◯月◯日」でも終業時刻までなのか、あるいはその日の深夜0時までなのか、解釈によってだいぶ違う。日付と一緒に時間も伝えるのが理想だ。
反対に依頼する際の「なるべく早めにお願いします」の「早めに」という表現もあいまいで行き違いを生みやすい。
「相手を迷わせてしまわないよう、『今週中にお願いします』など具体的な希望をはっきりと伝えるようにしましょう」
【×】言いがちフレーズ
了解です。
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【◯】好印象フレーズ
承知いたしました。
職場で一日に何度となく使う「了解です」。だが、これは上司や取引先には不適切なフレーズだ。
「〝了解〟という言葉にはへりくだった意味合いが含まれていません。そのため、同僚や下の立場の人には使っても問題ありませんが、目上の人に使うと対等なニュアンスを感じさせ、不快に思われる場合も。目上の人や取引先に対しては『承知しました』 『かしこまりました』などのフレーズを使うのが適切です」
「承知です」など、「〜です」といった砕けた表現もオフィシャルな場面にはそぐわないことも頭に入れておきたい。
「もうひとつ、よく使われるのが『ご承知おきください』というフレーズ。これは『あらかじめよく理解しておいてくださいね』という上から目線のイメージが拭えず、取引先へのメールなどで使うのは失礼です。この場合は『ご了承のほどお願い申し上げます』と、〝お願い〟のニュアンスを加えるのがいいでしょう」
【×】言いがちフレーズ
検討します。
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【◯】好印象フレーズ
◯日頃までにお返事します。
相手の提案への返事として便利な「検討します」。本気で検討する意欲がある場合のほか、実際にはその気がないのに社交辞令で使う場合もある。
「『検討します』は相手を期待させるフレーズ。その気がないのに使うと、信頼関係を損ないかねません。難しければ正直に『今回は難しいです』と伝えるべき。もし本当に検討する気があるのなら『◯日頃までにお返事します』など、目安でいいので期日を伝えると相手も安心するはずです」
もうひとつ、安易に使いすぎないほうがいいのが、「よろしくお願いいたします」。
「何かをお願いされて断ったのに、『引き続きよろしくお願いいたします』と言われると違和感を感じる人も。相手との関係性やタイミングを考えて使うようにしましょう」
【×】言いがちフレーズ
先日もお伝えしたとおり、
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【◯】好印象フレーズ
明確にお伝えしていなかったかもしれませんが、
「前に伝えたことを再び問い合わせをしてきた相手に対して『先日もお伝えしたとおり』と返すのは『この前も言ったよね』と言っているのとある意味同じ。『わかっていないあなたが悪い』と、無言の圧力をかけられた気になる人もいるかもしれません。単なるこちらからの連絡であれば問題ありませんが、問いかけに対してはこのフレーズは使わないのが賢明です」
メールでやり取りしていた場合は、以前送ったものを「◯月◯日付のメールを再送します」とひと言添えて送れば、こちらのミスでないこともさりげなく伝わる。
「その際、『明確に伝えていなかったかもしれませんが』という言葉を付け加えると、より相手への思いやりが加わると思います」
【×】言いがちフレーズ
今ちょっと手が離せなくて。
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【◯】好印象フレーズ
今は無理ですが、◯時以降ならできます。
「断ること自体は必ずしも悪いことではないですし、場合によっては必要。ただ、職場での人間関係はその後も続くので、そこでシャットアウトするのではなく、次へとつなげるために代案を出しましょう。そうすれば相手も納得し、不快な思いをせずにすみます」
「◯時以降ならできます」のほか、「全部はできないけれど、この部分でしたらできます」 「来月なら少し時間が空くから気軽に声をかけて」など。
「相手を完全に拒絶しているわけではないことを伝えるのが大切です」
【×】言いがちフレーズ
取り急ぎお礼まで。
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【◯】好印象フレーズ
まずはお礼まで。
「『資料をありがとうございました。取り急ぎ受領連絡まで』 『以上、取り急ぎご報告まで』など、メールで報告や連絡をする時に『取り急ぎ』をつけるのは問題ありません。ですが〝とりあえず〟もしくは〝時間がない〟などといった意味合いがある『取り急ぎ』は、お礼や謝罪をする際にはそぐわない言葉なのです」
特に謝罪のメールを送る場合は「取り急ぎ」をつけるべきではない。
「取り急ぎお詫びいたします」だと、「とりあえず謝る」という雰囲気が感じられて、相手を不快にさせてしまう可能性もあるからだ。
「お礼や謝罪をする場合は、〝真っ先に気持ちを伝えたい〟というニュアンスがある『まずは』を使いましょう。少しの違いで、相手が受ける印象はかなり変わります」
【×】言いがちフレーズ
その件は大丈夫です。
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【◯】好印象フレーズ
わかりました。/できかねます。
「『大丈夫』という言葉には、そもそもイエスの意味合い、あるいは『安心してね』というニュアンスがありました。ところが最近、特に若い人を中心に、断りの意味で使う場面も増えています」
たとえば資料作りを部下に打診したところ、「大丈夫です」と言われたので安心していたら、実は断られていたことを後で知って慌てた、というケースも実際にあったそうだ。
「最近の『大丈夫です』には正反対の意味があることを認識して、どちらかの意思を明確に示しましょう」
【×】言いがちフレーズ
体調を崩さぬようお気をつけください。
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【◯】好印象フレーズ
お健やかにお過ごしください。
「体調を崩さぬように」 「風邪など召されませんように」など、メールの結びでよく見られる、相手を気遣うフレーズ。実はこれは、避けるべきネガティブ表現の代表例だ。
「相手に気分よく読んでもらうためには、なるべくポジティブな言葉を使うことが大切です。結婚するカップルに『お幸せに』とは言っても、『不幸にならないでください』とは言いませんよね。また、『体調を崩さぬように』は、実際に体調が悪い人にとっては落ち込んでしまう可能性も。『お健やかに』という言葉は思いやりのあるポジティブなフレーズなので、受け取る側もうれしい気持ちになるはずです。よりかしこまった場面では『ご自愛ください』のほうが年代層を問わず使えるかもしれません」