住まいを軽やかに着替えていく、スタイリスト・石井佳苗さんの家。
撮影・枦木 功 文・鈴木奈代
自分と向き合い、まずは好きを知る。
「自宅のインテリアと向き合うことは、すなわち自分と向き合うこと」と石井さんは言う。
石井さんが暮らすのは築50年のヴィンテージマンション。フルリノベーションをした室内は〝好き〟が詰め込まれた宝箱のようだ。置かれた家具やものたちは、誰かが持っているからとか、誰々のデザインだからではなく、丁寧に見極めた
「自分がいい」と思えるものばかり。一度に揃えようとすると「まぁいっか」になりがちだから、「少しずつ」もポイントだ。
「手に入れたものには、きちんと飾る場所を用意し、輝かせることも、ものへの礼儀だと思います。そうして少しずつ家の中の好きな部分を増やし、嫌いな部分を減らしていく。『これでいっか』ではなく『これがいい!』に変えていくことで、だんだんと自分らしいインテリアになっていきます」
好きと思う世界観はそれぞれ違って当たり前。まずは自分と向き合い、好きを知ることが大切だ。
でも、そうやって手に入れた好きなものに囲まれた空間でさえ、飽きを感じることはある。そんな時は、模様替えをしてしつらえを変えてみたり、ものや家具を動かしてみるといい。
「紹介したファブリックやアートを替えること以外にも、ダイニングテーブルと仕事用のデスクを入れ替えたり、椅子を替えたり。我が家はスペースの都合で大きなソファも固定のTV台もないので、柔軟に家具の配置を変えられます。その2つをドーンと置いてしまうと、家具が固定されがち。スペースが限られる場合は、たまに来る来客のためのソファではなく、座り心地のいい一人掛けの椅子を数脚置いてみるとか。そのほうがフレキシブルに楽しめると思います」
凝り固まった空間も、ものや家具の配置を変えるだけで見え方や気分が変わる。動かしてみると空気が流れだし、澱みも消えていく。
「家具も一生ものと捉えずに、インテリアに合わなくなったり、飽きてしまったら、思い切って人に譲ったり、手放すのも策です」
こうして住まいも軽快に着替え、更新していけば、ずっと好きでいられるはず。気持ちに寄り添い、パワーチャージできる場所であり続けるに違いない。
取っ手ひとつで扉が見違える。
タイ・チェンマイから持ち帰った取っ手。白い扉もこれに付け替えるだけで愛嬌のある表情に。
気分転換はお香で。
日々の暮らしに香りは不可欠。東京香堂のインセンス「森のささやき」は雨の日に。
本棚は個性を発揮する場。
本棚も格好のディスプレイスペース。
本の表紙を見せたりオブジェや陶器を飾っても。
光と風が通る家に。
寝室や廊下の扉はナニック社のウッドシャッター。
光を調節でき、風を家じゅうに通す。
テーマを決めて飾る。
テーマを決めてまとめると美しく整然と見える。
ガラス棚の2段目にはシルバーのものを。
家具も入れ替え、気分を変える。
窓の外の緑が気持ちいい仕事スペース。机は時々ダイニングテーブルと入れ替えて気分転換。
鏡をアート代わりに並べて掛ける。
壁に鏡を飾ると広がりを感じる。動くたびに映り込む景色や反射する光が変化し、飽きない。
旅の思い出を集めたコーナーを。
旅先で見つけたものやお土産を集めて飾り、思わず笑みがこぼれる楽しいコーナーを。
『クロワッサン』1046号より