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60代で息子と共に建てた二世帯住宅へ。実現した感性を持ち寄る自由な家。

60代で兵庫から東京に住まいを移した夫妻。大きな引っ越しを経て実現したのは、旅の思い出や自身の作品に囲まれる、心地よい空間だった。

撮影・深水敬介 文・上條桂子

都内の静かな住宅街にある辻村邸。夫妻がそれまで暮らした兵庫県宝塚市から東京に移り住んだ2005年に、息子と共に建てた二世帯住宅だ。地下1階・地上3階建てで、1階と地下フロアに辻村夫妻が暮らす。

南側に地下から1階にかけて、吹き抜けと大きな窓があり、室内にはたっぷりと外光が降り注ぐ。観葉植物がぐんぐん育つ明るい空間だ。

白い壁と天井のシンプルなリビングは、長年使い続けた家具、旅行好きな夫妻が海外旅行から持ち帰ってきた調度品やオブジェに加えて、夫・章宏さんの陶芸作品、妻・紀子さんが描いた絵画や銅版画が彩る。

章宏さんが座るのは、宝塚に住んでいた時から愛用しているル・コルビュジエのソファ。広さは1階と地下の2フロアで約80平方メートル。
章宏さんが座るのは、宝塚に住んでいた時から愛用しているル・コルビュジエのソファ。広さは1階と地下の2フロアで約80平方メートル。

気に入ったものはとことん使うのも夫妻のスタイルだ。軽井沢で購入したバリ島製の椅子も、紀子さんが自ら張り替えた。リビングにあるラグも同様、30年ほど前に買ったものに、丁寧にダーニングを施して使い続ける。キッチンで愛用するトースターは、壊れたつまみを章宏さんが代用品で修繕した。

玄関を入ってすぐ広がる1階と地下の窓辺の階段。窓側の天井を少し高くすることで外光をより取り込んでいる。
玄関を入ってすぐ広がる1階と地下の窓辺の階段。窓側の天井を少し高くすることで外光をより取り込んでいる。

「部屋にあるものは、ずっと愛用し続けているものばかり、好きなもの以外は部屋に置きたくないんです。でもインテリアのことで夫ともめたことはありません。『あれ、いいよね』っていうのが、いつも一緒なんです」と紀子さん。

寝室とアトリエのある地下空間へ続く階段。大きな窓から入る光で明るい。紀子さんは寝室から見るこの景色が一番好きだという。
寝室とアトリエのある地下空間へ続く階段。大きな窓から入る光で明るい。紀子さんは寝室から見るこの景色が一番好きだという。

時間をかけて集めたものと夫妻が手がけた作品、今後も新旧のものが混在し、心地いい調和が生み出されるだろう。

スキップフロアと大きな窓で開放的な空間を手に入れる。

1階の玄関を中心に、半地下の寝室、アトリエと1.5階のリビングへ、それぞれ階段で向かうスキップフロア構造になっている。

地下にある寝室にも、心地よい光がたっぷりと。
地下にある寝室にも、心地よい光がたっぷりと。

この階段を窓側に置いて壁を作らないことで、居住空間をより広く見せることを実現。

キッチンには天窓があり、北側だが光が入る。
キッチンには天窓があり、北側だが光が入る。

地下からリビングの天井までの高さは、約5・5メートル。この吹き抜け部分も、実際より広く感じる効果を発揮している。また、窓のスペースを大きくすることで、庭や外部との一体感を生み出し、開放的で明るいリビングとなった。

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