くらし

超多忙の感性アナリスト・黒川伊保子さんの「忙しい」から逃れる8の知恵。

一日24時間はみな同じ。なのに、忙しさに追われる人と、そうでない人と。その差は何? 達人に訊く。
  • イラストレーション・村上テツヤ 文・嶌 陽子

(1)明日できることは今日しない。

一日にあれもこれもが忙しさの元凶。

イタリアに”明日できることは、今日するな”という諺が。黒川さんはこれを座右の銘にしている。

「女性は年齢とともに思いつくことの数が爆発的に増えるんです。『あれをやっておけば後で楽』を無限に思いつけちゃうから、結局いつまで経っても楽にならない(笑)。どこかで区切らないとだめです。
おすすめはto doリストを作ること。私は思いついたことを自分宛にメールします。そうすることで安心して、その日はもうやらない。多少時間がかかっても、その習慣がつくと、けっこう楽になりますよ」

(2)とにかく迷わない。 56歳はその黄金期。

50代半ばから判断力の切れ味が増す。

ある年の黒川さん。1年間で合計140本ほどの講演をこなし、著書を5冊出し、経営する会社の仕事も家事も行い、合間に趣味の社交ダンスを週に4回……。それでもあまり忙しいという感覚はなかったのだそう!

「迷わない、が最大のコツ。クヨクヨ、ぐずぐずは意外と時間が取られるので、しないと決めています。献立決めなんて電光石火。誰もが56歳で脳のとっさの判断力が最大になり80代まで続きます。自分を信じて」

50を過ぎて迎えるこの進化、肝に銘じておこう。

(3)グーグルカレンダーを家族と共有する。

仕事と家事をうまく回すために、デジタルツールで家族と情報共有。

土日も関係なく、講演やテレビ出演などの仕事が入っている黒川さん。スケジュールを家族で共有することが、暮らしをうまく回していく上で不可欠だ。

「私の場合、全ての予定をグーグルカレンダーに入れて、家族全員で見られるようにしています。土曜日の夕方に”講演”と入っていたら、それだけで家族は『お母さんは今日夕食を作れないんだな』と分かるんです」

しかも、カレンダーに入れるのは予定だけではない。

「たとえばカレーを作り置きしておいた日は、”カレー作り置き”と入力しておきます。そうすれば、私がいない日の夕食を家族が考える際、冷蔵庫にカレーがあることが分かりますから」

同居している夫、息子夫婦とのLINEグループもフル活用。

「『ウスターソースが切れちゃった』と一言送れば、皆が『OK』『ごめん無理』とか返してくれる。一人ずつに『買ってきて』などとメールするより、時間がぐっと短縮できて楽です」

(4)リスクとゲインはゲインだけに目を向ける。

「自分の夫」ではなく「親切な男友 だち」と思えば腹も立たない。

黒川さんの息子がまだ小さかった頃、育児にあまり参加してくれない夫に対し怒りを覚え、一瞬、離婚すら考えた時期があった。ただ、そうなると手続きや引っ越しなどが必要で、そんな暇はない。そこで取った方策が、発想を転換することだった。

「試しに、この人は夫じゃなくて、私たち親子を住まわせてくれる、実はすごく親切な男友だちなんだと思ってみたんですよ。そういう目で見ると、家賃は負担してくれるし、頼めば買い物もしてくれる。息子と私が熱を出したらお粥なんか作ってくれる。なんていい人だ!って(笑)」

「こうしたほうがいいのかな」「ああすればよかった」などとクヨクヨしていると、時間がどんどん取られ、「忙しい」の原因に。

「現状にリスクとゲイン(利益)があったら、ゲインをどう温存するかを考えたほうが絶対に得だと思います。そのためにいろいろな考え方を試してみるのが、私は得意なのかも。やってみると意外と楽しいものですよ」

(5)自分のやりたいことに柔軟性を持たせる。

趣味や好きなことについては臨機応変に、おおらかに考えるのが吉。

「まるで消えないテトリス」

黒川さんのスケジュールを見た人が呟いた言葉だ。それくらい、毎日予定がびっしりと組み込まれている。

「来週も、研究会と取材の間に1時間半空いていたので、その間に社交ダンスのレッスンの予約を入れました。職場からダンス教室まで自転車で15分なんです。
とはいっても、かなりぎりぎりですよ。だからレッスンに遅刻することもよくあります。まだレッスン時間が5分くらい残っているのに仕事に戻らないといけないから『先生、今日はもうこれで結構です。あとの5分は休んでくださいね』と言って帰ったり(笑)。
仕事に穴を空けるのは絶対NGだけれど、ダンスのレッスンは自分がお金を払う側なので、遅刻や早退は自分が損するだけ。ですからそこは多少緩くてもよしとしています」

趣味についてはあまり堅く考えず、多少の融通を利かせること。それがゆったりとした気持ちでいるための秘訣なのかも。

(6)叱っても直らないことはあきらめる。

道具を活用したり、動線を整えたりすることで「腹の立たない家」に。

黒川さんの息子には、子どもの頃から置きっぱなしの習癖が。以前は家じゅうのあちこちに服や本などが置いてあった。

「こういう癖って何度言っても直らないんですよ。『どうして片づけないの!』と毎日叱っていたら、それだけでかなり時間の無駄。だからすっぱり諦めて、部屋に息子用のかごを置くようにしたんです。
我が家では息子の”エサ箱”って呼んでました(笑)。置きっぱなしのものはとりあえず私が全てその中に入れる。息子が『あれはどこ?』って探していたら、その息子専用の箱を見てもらえばいい。怒る時間が減りました」

イラッとするだけで1〜2秒は思考や動きが止まってしまうもの。一日に50回くらいイライラすると100秒のロスに。

「それだけでなく、一度イラッとするとその後のリカバリーにも時間がかかるので、積算していくと一日に数十分は損する可能性も。怒らないって、実はすごく時間に余裕ができるんです」

(7)お願いには「NO」と言わず、今できることを伝える。

明るくパニックになることで、周囲も思わず協力したくなるかも。

頼まれるとつい引き受けてしまい、気がつくとやらなければならないことが山積みに……。そんな人も少なくないはず。

「私は会社員時代から絶対にノーは言わず、その代わりに今できることを的確に伝えるようにしていました」と黒川さん。

「上司に『これを来週火曜日までにやって』と言われたら『80パーセントまではできますが、そこで一旦報告書をあげましょうか?』と再提案するんです」

相手に伝える際、気持ちと事実を分けて考える。『最大限やってあげたい』という気持ちを100パーセント差し出しつつ、「今はここまでならできる」と、実際にできる量は冷静に死守することが大事だという。

「『忙しいのに!』と気持ちで拒絶しながら無理してやってしまうと、感謝もされにくい。私の場合、最後の秘策は『あれもこれもやってあげたいけれど、今は手が回らないの!』という〝朗らかパニック作戦〟。周囲も積極的に手を貸してくれます(笑)」

(8) 「SNS」や「メール」は絞り込んで利用する。

何もかも手を出そうとせず、思い切ってツールの断捨離をしよう。

LINEのメッセージに返信したり、インスタの投稿に「いいね」を付けたり。そんなことをしていると、あっという間に時間が経ってしまいがち。黒川さんの場合、SNSは2つに絞って使っている。

「インスタは好きで、純粋に楽しんでいます。LINEは家族で使う以外に、ダンス仲間と動画を共有するのに活用中。その2つで手いっぱいで、フェイスブックまでは手が回りません。ツールを絞り込むのと、友だち登録をむやみに増やさないのがいいのかもしれないですね」

メールアドレスを交換する際も、「申し訳ないけれど、時間がなくて、メールをもらってもあまり返事ができないんです」と予め断りを入れておくという。

「勇気がいるかもしれないけれど、既読スルーの人だと最初から思われておく。あと『すごく大事な内容は、冒頭に”重要”って入れてね』って頼んでおきます。すると、自然と重要なメールしか来なくなるんですよ」

黒川伊保子

黒川伊保子 さん (くろかわ・いほこ)

感性アナリスト、随筆家

「感性リサーチ」代表。脳機能論の立場から世界初の語感分析法を開発した、感性分析の第一人者。著書に『家族のトリセツ』など多数。

『クロワッサン』1043号より

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