エッセイスト、岸本葉子さんの老後のお金と備え。
最大公約数的な自分のセンサーを信じて。
ずっとフリーランスで働いているので、30歳の頃にはもう老後を意識していました。当時、高齢女性が立ち退きにあい、次に住まう場所を貸してもらえないといった報道もあり、時代的な不安もあったと思います。
その後、36歳で自宅マンションを購入し、早めにローンを返済しましたが、40代後半で親の介護のために近所にマンションを用意しました。このローンは78歳で完済予定です。
不動産が私の資産のメインになるので不安でしたが、自著で取材したファイナンシャルプランナーの方は問題ないと。もっと財政状況を厳しく指摘されると思っていたところ「不安だというけれど、あなたは今お年寄りのためになにかできていますか?」という問いかけが印象的でした。
もちろん税金の支払いなど間接的にしているけれど、高齢者を支えているという実感がないから、自分の将来もイメージできなかった。
最近考えるのは、お金を不安に思いすぎるより、平凡さや最大公約数的なことが持つ力を信頼してもいいんじゃないかなということ。私であれば、国民年金と健康保険を払い、ローンを完済する。贅沢をせずふつうの金銭感覚のセンサーを持ち続けること。
あとは介護が必要になったときに情報を得られるようにコミュニケーションを大切に。困ったときは臆さず情報開示をして。こういったことが、100万円多く貯金するよりも大事な備えになるような気がします。
『クロワッサン』1038号より