自分が認知症になったら、お金の面倒はだれが見てくれる?
文・太田祐子
ひとり老後に関する著書もある豊田眞弓さんに聞いた。
「認知症患者の金融資産は、2030年には215兆円にのぼると試算されています。これは日本の金融資産の1割。これがまったく動かせないとなると大問題です。そのため、事前に信頼できる親族などを代理人として窓口に届け出ておいてもらうなどで対応する銀行も出てきています」
介護保険と同年の2000年に始まった成年後見制度は、まだ意思能力がある段階で契約する任意後見制度と、理解力や判断力が失われたあとに家庭裁判所が後見人などを選ぶ法定後見制度がある。どちらも介護サービスや契約などの身上監護と預貯金の出し入れなど財産管理を目的とするものだ。
「法定後見による成年後見人は、これまで弁護士や司法書士、行政書士など専門職資格者が選ばれることが多かったのですが、今は、最高裁や厚生労働省が親族から選任することが多くなってきました。
ただ、法定後見の場合、家庭裁判所の審理・審判などがあり、後見人が決まって後見が始まるまでに半年ほど時間がかかります。心配な場合は、元気なうちに信頼する人と任意後見契約を結んでおくと安心。1カ月程度で後見が始められます」
任意後見人を選ぶ際には、親族や親しい友人はもちろん、専門家に頼むこともできる。
後見人を頼める親族がいない、専門家に頼むほど費用を負担できないといった場合はどうしたらいいのだろう。
「一度、自治体の社会福祉協議会に相談してみては。社協によっては契約を結んで身上監護や財産管理、中には葬儀や死後事務委任まで依頼できる場合もあります。また、ボランティアで後見を務める市民後見人の情報なども社協で得られる可能性があります」
『クロワッサン』1038号より