心理学が考える「欲」との付き合い方と心のトレーニング。
イラストレーション・植松しんこ 文・板倉みきこ
【心理学】が考える 「欲」とは…
[持って当然のもの。でも、心からの欲求かその都度、自問したい。]
欲を悪いもの、持ってはいけないと考えるから自分を追い詰めてしまう、と公認心理師の伊藤絵美さん。
「シロクマのことを絶対に考えないでください」と言われると、意識せざるを得なくなるという心理学で有名な実験がありますが、それと同じです。欲張ってはいけないと考えた途端、頭の中に欲しいものや、やってほしいことが浮かぶのが人間なんです」
そもそも人間には、子どもであれば満たされてしかるべき欲求がある。
「安心したい、愛されたい、理解されたい、守られたい、自分に自信を持ちたい、物事にチャレンジしたい、自分の欲求や感情をまず大事にしたい、のびのびと暮らしたい、みんなと平等でありたい……などの感情的欲求です。
でも、すべての欲求を満たされて大人になった人はいないのが現実。幼い頃に自分の心からの思いが満たされなかったことで傷つくと、本当の欲求に蓋をして見ないようにしたり、他のことで埋め合わせてしまいます。その結果自分らしい生き方から離れ、生きづらさを感じるようになるのだと思います」
心の欲求に応えていれば問題ないが、多くの人は頭で考えて行動している。
「過食や買い物が止められないなどの行為は、本来の欲求の埋め合わせ。だから満たされることはないんです。また、人のために頑張りすぎるタイプも、自分の感情を大切にせず、頭で行動しているパターンです」
自分の心からの欲求や感情に気づき、その都度ケアできれば、生きづらさやストレスは軽減していく。
「まずは自分がどんなことにストレスを感じるのか、それにどう反応しているかを知り、ネガティブな感情を否定せずに受け止めてみましょう。そして少しずつ、ストレスの対処法を身につけていく。
日々のストレスに気づき、対処することを続けていると、自分の感情にも敏感になり、本当に求めていることは何かがわかってきます。心のトレーニングは筋トレなどと一緒。毎日焦らず続けていけば、ある時、今までと違う自分に気づく日が必ず来ます」