うつわ好きのパン職人、徳永久美子さんの食器棚。
そんな理由で同じ食器ばかり使っていてはつまらない。色やサイズ、形を替えれば同じメニューが見違える。旅先で出合ったうつわ、受け継いだ一枚は物語を添えてくれる。日々の食卓が豊かに変わるうつわレッスン、スタートです。
撮影・青木和義 文・松本あかね
憧れの雑貨店で見つけたヨーロッパのプレートは今も現役。
夫がデザインしたという食器棚には、新婚時代から幾度の引っ越しを経てなお現役のうつわが並ぶ。その多くは忙しい製パン業と3人の子育ての合間を縫って買い集めたものだ。
「よく足を運んだのは、当時上陸したばかりの渋谷の『ウィリアムズ・ソノマ』や自由が丘の『キャトル・セゾン』。行くたびにワクワクするものがありました」
そのうちのいくつかは、今や成人した子どもたちも愛用する。
「5枚買ったうち1枚だけになったイタリアの白い陶器の皿は、いつも誰かが使っているし、何を食べるにも塗りの丼という人もいるし」
各人がうつわには一家言ある模様。朝のテーブルに並ぶ銘々お気に入りのスープ皿がそれを物語っているようだ。
サンフランシスコのレストランで出合った、 シンプルイズ ベストな皿。
長男とサンフランシスコへ旅し、アリス・ウォータース率いる名レストラン『シェ・パニース』へ。料理のすばらしさはもちろん、印象的だったのは「お皿がどれも使いやすくて」。急遽、窯元を訪れて買い求めたのがこちら。深さのあるプレートは具沢山のスープに、長男が腕を振るう手打ちパスタにと大活躍。
家族のお気に入りのうつわが並ぶ、賑やかな朝のテーブル。
これからの季節は徳永さんが仕込みから焼き上げまで手がける「パン・ド・ロデヴ」のチーズトーストに、カリフラワーやごぼう入りのミネストローネをたっぷりかけたものが朝の定番。各自、気分に応じてうつわを選び、自分で盛り付けるスタイルだ。自家製ミックススパイス入りの紅茶は蕎麦猪口で。「量がちょうどいいんです」
パスタ、寿司、ケーキも おおらかに受け止めるイタリアの絵皿。
新婚の頃、『ウィリアムズ・ソノマ』で購入したイタリアの絵皿。「果物の絵柄がかわいくて」。「まだパン屋を始めたばかりで余裕がない頃、レストランで食べたトマトのパスタを家で再現するのにぴったりでした」。洋食に留まらず、白地にブルーの色合いのおかげでちらし寿司もさわやかに映える。ドット柄のものは耐熱皿で「焼きリンゴをするときは絶対にこれ。じゃがいものグラチネもよく作りました」。一枚一枚に思い出が蘇る。
※この号で掲載したうつわは、作家ものなど、雑誌発売時に店舗に同じものの在庫がない場合もあります。ご了承ください。
『クロワッサン』1032号より
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