いよいよ冷水さんの朝食をいただきます。
これまで「ししいわハウス」では朝食はほぼ簡単なものしか提供がなかったとのこと。より快適な滞在の実現のために、オーナーのホアン氏が冷水さんに依頼があったとか。
特に注文はなく、ただ「希三子らしく」と言われた冷水さんが、朝食メニューを考えるにあたって注力したのは、軽井沢らしさ。
「軽井沢に来て最初に食べる朝ごはんを想定して。ああ、軽井沢に来たなぁと思ってもらえて、なおかつその後に食べるランチもおいしく食べられるよう、あまり重くならない感じにしました」(冷水さん)。
食材はほとんどが軽井沢近郊から調達、実際に畑などにも赴いて、厳選したというのが冷水さんならでは。
まず最初にサーブされたのは「バターナッツスクワッシュのポタージュ 山の恵みのシリアル」。
軽井沢で育ったオーガニック・バターナッツスクワッシュのポタージュは、山くるみやアマゾンカカオのカカオニブ、シャルドネの干しぶどうを種ごと、浅間山麓高原のアカシアはちみつ等をシリアルにして最後に加えたもの。ひと口ごとに、カカオの酸味や風味、くるみのカリッとした食感、やわらかい干しぶどうの果肉と種の歯応えのあるニュアンスなどが甘めのポタージュと合いまって、楽しくおいしく、スプーンが止まりません。
「普通のかぼちゃスープって、おいしいんだけど3口ぐらいで飽きちゃいませんか?」と冷水さん。
確かに。でもこのスープは違います、かぼちゃのこっくりとした甘みを飽きることなく、見事に胃を開いてくれる。一緒に出されたりんごジュースも、軽井沢の松澤農園のもの。ジャムは同じ農園のりんごに、冷水さんらしく「りんごの風味を活かすようにほんのちょっと、かすか〜に」カルダモンを効かせているりんごジャムといちごジャム。パンは上田市のパン工房halutaから。「halutaは黒パンが有名だけど、朝なので軽いもので」と、そんな心配りが、1皿めから随所に感じられます。
メインは、軽井沢周辺のおいしいものがぎゅぎゅっと凝縮されたようなひと皿。
「スープで体を温めたあとに、蒸した野菜と冷たいサラダを」と、ここにも優しい気遣いが溢れています。特に驚いたのは「蒸し蕪のチーズソース」。寒暖差がある軽井沢で穫れる蕪は甘みが強いそう。その蕪を皮付きのままふんわりと蒸して、普通ならかなり癖が強い山羊チーズのソースで食べるレシピ。
冷水さんが厳選したチーズラボBosquesoのシェーブルチーズは、マイルドなのに山羊らしさも良い加減で残っていて、生クリーム、牛乳と合わせたソースが、蕪と本当に絶妙なハーモニーを醸すのでした! クタクタにオイル蒸しされた蕪の葉もマッチして、無駄なくいただいていることに、朝から体も喜んでいます。
浅間の鶏牧場の卵はポーチドエッグに、リーフサラダには白いちじくもミックスされ、フェンネルの花とともにすっきりとしたアクセントに。軽井沢デリカテッセンのロースハムに添えられた粒マスタードは、なんとマスタードにりんごジュースを吸わせて熟成させたししいわハウスオリジナル!
このひと皿に本当に何種類の食材が入っているの?と驚くほど、どこを食べても、どこから食べても、鼻も舌も胃も喜びに包まれます。食後のコーヒーを飲む頃には、心地良い満腹感と、味の記憶に充たされて、冷水さんの意図どおり、軽井沢をいただいた、という満足感に浸っていました。
冷水希三子さん。すべておまかせ、のオーナーの発注に、「坂さんデザインのこの空間に合うような朝食にしたかったんです。あまりコテコテせず、でもきちんと作られたものに」。その言葉どおり、軽井沢の自然や生産者を感じ、細部にこだわりや工夫がされた、おいしい朝食が完成した。「これから春夏秋冬でいろいろ変化して、楽しめるものにできたら。生産者の方とももっと知り合って、徐々に食材も増やしていきたいですね」。
ししいわハウスのフードプロジェクト「Shishiiwa Kitchen」第一弾、冷水さん監修の朝食は11月6日からスタート。今後は季節ごとにメニューが追加されるほか、夜のメニューも冬には始まる予定だとか。
今なら紅葉が美しく、冬は冬の魅力がある軽井沢。ぜひししいわハウスで、おいしいごはんと素敵なステイを楽しんでほしい。