くらし

秋吉久美子さんに聞く、学びあるひとり時間の過ごし方。

ひとりでもできる楽しみ、ひとりだからこその贅沢な時間。
何にも邪魔されない、秋吉久美子さんの豊かで幸せな過ごし方を紹介します。
  • 撮影・天日恵美子 スタイリング・伊島れいか  ヘア&メイク・黒澤貴郎 文・菅野綾子

ひとりで趣味に没頭するひとときは大事な学びの時間。

ブラウス6万2000円、パンツ4万7000円(共にDOROTHEE SCHUMACHER/サン・フレール TEL.03-3265-0251) キャミソール6,000円(ダンスキン/ゴールドウイン カスタマーサービスセンター TEL.0120-307-560) パンプス8万円(JIMMY CHOO TEL.0120-013-700) ピアス7万8000円、ネックレス3万8000円、リング上5万8500円、リング下4万9000円(以上CASUCA TEL.03-5778-9168)

40歳の時にサンフランシスコのアートスクールカレッジに留学したり、53歳で早稲田大学大学院に入学したり。勉強家としても知られる女優の秋吉久美子さんにとって、ひとりで過ごすひとときは大事な学びの時間なのだそう。

「昔から、なんでもかんでも吸収していくことが好き。学ぶ時間に必ず新しい発見があったり、いろんなイメージが繋がっていったり。学びを続けるともっともっといろんなことを知りたいと思ってしまうんです」

そんな秋吉さんが、特に最近夢中になっているのが、詩吟、書、ヨガ。

「詩吟は漢詩が学べるし、西郷隆盛だったり、橋本左内だったり、そういう偉人たちが事に当たって書いた句を吟じることで、その当時の心境にも触れられる。書は、何の字を書くかというところに芸や知性が問われるし、ヨガは筋肉の動かし方について毎回新しい発見があるのが楽しいんです」

習い事は女優としての感性や自分を磨くことにも繋がる。

これらの趣味はすべて、女優としての感性を磨くことにも繋がっている。

「基本的に映画の現場はアウトプットの場所。だからいつもこっそりチャージしておかないといけないんです。それに、女優という仕事はコンスタントに仕事が入ってくるわけではないので、常に危機感があります。だから習い事をしたりして、感性のアンテナだけは立てておかないといけない。それは自分を磨くことにも繋がりますよね」

ほかにも読書や料理など多彩な趣味を持つ秋吉さん。それでも知的好奇心は尽きず、「まだまだ足りない」と言う。

「いま興味があるのは、2000年前のユダヤの言葉と言われるアラム語。聖書を日本語や英語、ラテン語で読むのは感覚的にはちょっと違うのかもとふと感じて。ジーザス・クライストがその時、どういう響きで、どのように喋ったのかを、実際に体感してみたい。たぶん私が、次に勉強を始めるとしたらこれですね」

オンラインヨガ

[自分の身体について毎回新たな発見がある。]

「インド哲学やヒッピーに興味があって、初めてヨガに触れたのが45年前。それから、やめたり再開したりを繰り返しています。一時期は自分にサディスティックになれるアシュタンガヨガにハマっていたのですが、今はストレッチが中心のオンラインレッスンを家でひとりで受けています。身体を伸ばすのが気持ちいいというのもありますが、自分の身体や筋肉の動かし方について、毎回なるほど! という新しい発見があるのがおもしろいんです」

もともとスタジオに通っていたものの、ステイホームを機にオンラインに切り替えたそう。トップス7,000円、パンツ1万3000円(共にダンスキン/ゴールドウイン カスタマーサービスセンター TEL.0120-307-560)

[芸、知性、身体能力が問われるのが書の魅力。]

「師は海老原露巌先生。書は習字と混同されがちですが、美しい字を書くことを目的とした習字と違い、ファインアートに近いというか、空白と墨のバランス感が大事。そして、選んだ字に、芸や知性が出ます。さらに、見る人が見れば、迷いがなかったなとか、ここはもたついたなとか、字のスピード感までわかってしまう。芸や知性、身体能力まで問われるところがおもしろくて、もう4〜5年続けています」

右・書の風景。左・詩人の秋亜綺羅さん主宰の『月刊ココア共和国』で募集した、第1回秋吉久美子賞のフライヤーに使用した書。李白の詩の一節より「誰(たれ)(か)念(おも)(わん)北楼(の)上」。

詩吟

[好きな漢詩が学べて芝居にも役立つ。]

「中学生の頃から漢詩に興味があったのですが、たまたま妹が詩吟をやっていて、しかも雅号までもらっていると聞き、私も急いで始めました(笑)。詩吟の魅力は、漢詩が学べて、声が出せて、集中できるのはもちろん、過去の中国にも平安時代にもタイムトリップできるところ。また、好きな詩だと感情移入もできるので、お芝居のトレーニングにもなるんです。ひとつの詩の時代の中にひとり入りこみ、声を出して、ドラマを演じられるところが楽しい」

師は菊池錦鄕氏。びっしりと書き込まれたテキストは、「3冊目にして、やっと杜甫に会えた!」と秋吉さん。
秋吉久美子

秋吉久美子 さん (あきよし・くみこ)

1954年、静岡県生まれ、福島県育ち。’72年女優デビュー、多くの映画やドラマで活躍。出生から女優としての現在に至るまでに迫った、樋口尚文さんとの共著『秋吉久美子 調書』(筑摩書房)が発売中。

『クロワッサン』1031号より

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※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

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