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意識や論が先走ると、とんでもないあやまちを犯すおそれがあります――舩木倭帆(ガラス作家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回はガラス工芸家の言葉から、ものづくりの源泉を探ります。
  • 文・澁川祐子

意識や論が先走ると、とんでもないあやまちを犯すおそれがあります――舩木倭帆(ガラス作家)

1979年6月25日号「九州民芸村でワイングラスをつくる舩木倭帆さん」より

舩木倭帆さん(ふなきしずほ、1935-2013)は島根県の布志名焼の窯元、舩木道忠の息子として生まれ、ガラス作家として活躍した人物。その作品は日常のうつわでありながら、流れるような曲線の造形とあざやかな色とが調和し、ガラスならではの魅力にあふれています。…と熱く語るのも、何を隠そう、私自身、舩木さんのガラスが好きで背伸びして1つ、2つ求めたことがあるからです。

そんな舩木さんが、制作について語っている誌面を見つけ、思わず熟読。そこで浮かびあがってきたのは、ガラスという素材に強く魅せられている姿でした。

〈不思議ですよね、考えてみればみるほど。どうして向う側の物が見えるのかねえ。石の粉でしょう、それが溶けると先が見えるなんて……〉

長年制作を続けながらも、新鮮な気持ちを失わない舩木さん。でも、技術的に上達した今が一番難しいところだと語っています。

〈上手になったから、物がよくなったかっていうと、決してそんなことはないんですね。昔、悪戦苦闘して作った物には不思議な力がある。(中略)腕がよくなると、物がうわすべりしちゃってね〉

意識が先行すると、いいものはできない。名言は自分自身に向けた戒めでもあるのです。意識や論に振り回されずに、まっさらな感覚で素材と向き合い、つくる手を止めない。その姿勢が、あの艶めかしいうつわを生み出す源泉なのだと感じ入りました。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。なお誌面では「船木」となっていましたが、本稿では正式な表記「舩木」に変更しました。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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