くらし

『岸惠子 いまを生きる』。大女優が語る〈いまを生きる〉術とは。

すっと伸びた背筋。ひとりで舞台に立つ姿の存在感と華やかさは、まさに1本の大輪の薔薇のよう。

岸惠子さんが、10月にトークショーを開催する。これまでも不定期にツアーを行ってきた岸さん。ある年は映画の名監督との貴重なエピソードで、ある年は自著の小説を元にしたひとり芝居で客席を魅了。先日開かれた製作記者会見で、現在の思いを語った。

前回公演の1シーンから。成熟した女性の愛と矜持を書いた自身の小説『わりなき恋』の朗読劇。情感あふれる台詞回しで客席を圧倒。

新型コロナの影響で世界が大きく変わった今年、生きることへの考え方に変化がありましたか?

「コロナ禍の前も現在も、生きる姿勢に変わりはありません。ただ、世界レベルの難事にどう耐えていくかということだと思います。私はいつも一生懸命生きてきて、ごまかしのない、自分に正直な生き方をしてきたつもりです。それはコロナがあろうがなかろうが、同じことだと思います」

女優デビューから70年。フランス人映画監督との結婚そして離婚など、激動の人生を歩んできた。

「私は日本が外国への旅行を禁止している時代にパリに飛び立ちました。祖国を捨て二度と帰らない覚悟で」

フランスは、日本とは文化も精神も違う〝大人の国〟だったと言う。

「東海の小島で育ち、川魚と草を食べて暮らしてきた島国の女は、国境線を巡りせめぎ合ってきたしたたかな人たちには負けてしまうのです。でも『負けてもめげない』『負けたなかから何かを学ぶ』ことをどこかで拾ってきたんですね。気がついたら、私も強い女になっていました」

今回のショーのテーマをその〈負けたままでいない、何かをつかみ取って勝ちにする生き方〉に据えた。

今年の8月に米寿を迎えた。変わらない美しさの秘訣を聞かれ、

「私には褒め言葉が〝88歳に見えない〟ということしかないの?」と笑う。

「自然体で暮らすことです。見栄を張ったり、自分にできないことをやってみようとはしません。ただ自分にできることを誠心誠意やろうと」

エッセイの名手としても知られる。好奇心とユーモアに溢れた、歯切れのいい文体で人気だ。強く美しいひとの言葉、受けとめに出かけたい。

『岸惠子 いまを生きる』
10月3日、東京・新宿文化センター大ホールを皮切りに、都内および近郊全7カ所で開催予定。問合せ:サンライズプロモーション東京 TEL.0570-00-3337(平日12時〜15時) https://kishikeiko2020.wixsite.com/imawoikiru
※今後の状況次第で開催延期等の可能性があります。

岸惠子(きし・けいこ)さん
女優、作家。

横浜市出身。映画『君の名は』でスターに。24歳で結婚のため渡仏。『細雪』『約束』など多数の映画に出演。著書『巴里の空はあかね雲』で文芸大賞エッセイ賞受賞。

『クロワッサン』1029号より

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