くらし

残暑厳しき折に、墓参噺などを。│柳家三三「きょうも落語日和」

  • イラストレーション・勝田 文

もうこの時期「怪談噺」の話題は証文の出し遅れのような気もしますが、きっと残暑もまだまだ厳しいでしょうからご容赦ください。

毎年8月11日、東京・谷中の全生庵というお寺で幕末から明治にかけて活躍した大名人、三遊亭圓朝を偲んで「圓朝忌」という法要が営まれます。
この圓朝というかたは演者として名人であったばかりでなく、創作の分野でも「牡丹灯篭」「真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)」「文七元結(ぶんしちもっとい)」「死神」など多くの噺を作り、今でも頻繁に演じられています。

とくに圓朝作の怪談噺を演じるときには全生庵へ墓参するのがならわしになっています。
歌舞伎では「四谷怪談」を上演するときにはお岩さんをお祀りした神社へお参りしないと祟りがあるといわれているそうですが、落語界では圓朝ものです。

私は墓参を欠かしたことがないので体験していませんが、あるぞろっぺいで知られる師匠がお参りせずに演じたところ、打上げのお店で二軒続けて人数よりひとつ多いグラスが出されたとか、家族が噺の幽霊と同じ病にかかったとか……。信心深くない私もさすがに怖いし、お客さまにも安心して怪談日和を楽しんでいただきたいからお参りするんです。

この圓朝忌、今年はコロナ禍でごく小規模でしたが、例年は一般のかたにも公開され、使い終えた古い扇子をお焚き上げして供養したり、圓朝師の位牌に向かって噺家が奉納落語(位牌に向かうため、本堂で聞いているお客さまにお尻を向けて演じるという珍しい形式。演者は毎年「やりにくい」とこぼします)を演じたり、興味深い催しですよ。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は公式サイトにて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』1029号より

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