くらし

『秘める恋、守る愛』著者、髙見澤俊彦さんインタビュー。「いまこそ愛の力、信じる力を表現したい」

  • 撮影・黒川ひろみ(本)

「いまこそ愛の力、信じる力を表現したい」

髙見澤俊彦(たかみざわ・としひこ)さん●1954年、埼玉県生まれ。THE ALFEEのリーダー。2018年に小説『音叉』を発売。THE ALFEEの夏のイベント『夏の夢』を8月24・25日に無観客ライブ配信、26日に新曲「友よ人生を語る前に」をリリース。

髙見澤俊彦さん2作目の小説は、恋愛小説。
前作の『音叉』では’70年代にプロを目指したバンドマンを描き「自伝的小説」と評された。まったくのフィクションだったが予想以上に自分と重ねられたことの反省から、今作では趣向を変えて主人公は大手電機メーカー執行役員・来栖直樹。
長年連れ添った妻・有希恵と共に、一人娘が暮らすミュンヘンへと向かう機内の描写から始まる。かつて直樹の留学先でもあったミュンヘンの街を家族と歩きつつ、心に仕舞い込んだ恋の記憶と愛の葛藤を丁寧に描く。

「小説を連載した『オール讀物』に、僕が子どもの頃に読んだ本についてのエッセイを寄稿したんですよ。それをきっかけに小説連載をしてみないかと声を掛けていただいて。編集長に、僕に書けますか? と聞いたら、書けますよ! と簡単に言うんですよ(笑)。
作家というのは最後までプロットを組み立てて書き始めるのかなと思っていたら、いやいやいろんな作家がいますよ、と。それで音楽と一緒なんだと気づいて楽になりましたね。イントロだけ考えて後でAメロを作ったり、サビから考えることもありますし。今回もイメージ先行で書き進めました。すると話に聞いていたように、物語が動いて人物が動き始めたんですね。ああ、こういうことかと理解できました」

ヨーロッパの変わらない街並みに過去の記憶が蘇りました。

髙見澤さんは’80年代初頭、兄が赴任していた西ドイツに興味を持ち、まだ東西を隔てていたベルリンの壁を目の当たりにする。執筆中の昨年は取材旅行でミュンヘンに。

「街がきれいになってお店も変わっていましたけど、旧市街地と呼ばれるところは当時のままあるのが素敵ですよね。東京は、僕が高校時代の渋谷や六本木では驚くほど違う(笑)。ふと変わらない場所に行くと、小説の主人公のように過去の記憶が蘇りますよね。そこが、ヨーロッパの魅力だと思います」

今年は恒例のTHE ALFEE全国ツアーが延期に。緊急事態宣言下は髙見澤さんも悩んだという。

「さすがにニュースを見ていると不安になりましたね。そこには希望がない。じゃあ僕にとって希望は何だ? と問いかけたら新曲や新たな小説でした。
そこからはもう創作三昧で、楽曲は7曲、小説も3作目を書き始めました。そうやって生まれた作品が、未来の希望になるかどうかはわかりませんが、とにかく何か新しいものを生みだしていかないと、僕みたいな者の存在価値などないですから。そういうものが未来のコンサート、次の小説に繋がっていけばいいですからね。性格的に明るいほうではないので、創作することで自分を鼓舞しているのかもしれません」

日々何かしら、文章やプロットらしきものを書いたり、曲を作りためたりしている髙見澤さんの日常が、今後の創作に繋がっていく。
「料理も掃除も得意ではないし、ダメ人間の典型です(笑)。なので音楽と小説だけは、今後も二刀流で突き詰めていきます」

現地に暮らす娘に会うためドイツを旅する夫婦。胸に秘めた遠い恋の記憶、今ここにある愛を見返す7日間の物語。 文藝春秋 1,700円

『クロワッサン』1027号より

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