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加賀まりこが“女”であることの空虚さを体現する傑作!『月曜日のユカ』│山内マリコ「銀幕女優レトロスペクティブ」

『月曜日のユカ』1964年公開。日活作品。DVDあり(販売元・日活)
『月曜日のユカ』1964年公開。日活作品。DVDあり(販売元・日活)

モダニストと称される監督・中平康が、東京オリンピックが開催された1964年(昭和39年)に撮った『月曜日のユカ』。おしゃれムービーの代名詞的存在として語り継がれていますが、たしかにこれを超えるスタイリッシュな映画はこの世にない! 2020年に観てもそのかっこよさに度肝を抜かれる傑作です。

横浜のナイトクラブで働く18歳のユカ(加賀まりこ)は誰とでも寝ると評判だが、キスだけは愛人であるパパ(加藤武)にもさせない。ある日ユカは、家族サービスに励むパパを街で見かける。娘にお人形をねだられているパパの幸せそうな顔を見たユカは嫉妬にかられ、ボーイフレンドの修(中尾彬)にパパの家の前で抱いてと誘うが……。

ユカがどんどん服を脱いでいくオープニングタイトルからして最高にクールですが、それ以上に目をみはるのが、男という生き物に最適化したユカのキャラクター。「愛するっていうことは尽くすっていうこと。尽くすってのは男を喜ばせることさ。男を喜ばせるのは女の最大の生きがいなんだよ」という米兵の“オンリー”だった母(北林谷栄)の教えに従い、パパを喜ばせたいと本気で苦悩するユカ。男にとって理想的な“カワイイ女”を地で行くユカのピュアさは完全に狂気の域ですが、実はこれ、横浜で語り継がれた実話を元にしているそう。そしてアフリカへの憧憬を口にするユカには、オードリー・ヘップバーンが『ティファニーで朝食を』で演じたホリー・ゴライトリーと同じ匂いが。精巧な人形のようなルックスと、地に足の着かないふわふわした妖精っぽさ。ユカを演じる加賀まりこが時折り見せる空虚な表情は、男のために存在する“女”という役割を生きることの救いのなさをヒリヒリと物語ります。

本作は無意味にスタイリッシュなのではない。とびきりポップに軽薄に描いているからこそ、女という生き物の危うさが浮かび上がるのです。完璧なキャスティングが実現したことで、映画は伝説となりました。

やまうち・まりこ●作家。新刊『The Young Women’s Handbook〜女の子、どう生きる?〜』(光文社)が発売中。

『クロワッサン』1027号より

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