ユカがどんどん服を脱いでいくオープニングタイトルからして最高にクールですが、それ以上に目をみはるのが、男という生き物に最適化したユカのキャラクター。「愛するっていうことは尽くすっていうこと。尽くすってのは男を喜ばせることさ。男を喜ばせるのは女の最大の生きがいなんだよ」という米兵の“オンリー”だった母(北林谷栄)の教えに従い、パパを喜ばせたいと本気で苦悩するユカ。男にとって理想的な“カワイイ女”を地で行くユカのピュアさは完全に狂気の域ですが、実はこれ、横浜で語り継がれた実話を元にしているそう。そしてアフリカへの憧憬を口にするユカには、オードリー・ヘップバーンが『ティファニーで朝食を』で演じたホリー・ゴライトリーと同じ匂いが。精巧な人形のようなルックスと、地に足の着かないふわふわした妖精っぽさ。ユカを演じる加賀まりこが時折り見せる空虚な表情は、男のために存在する“女”という役割を生きることの救いのなさをヒリヒリと物語ります。
本作は無意味にスタイリッシュなのではない。とびきりポップに軽薄に描いているからこそ、女という生き物の危うさが浮かび上がるのです。完璧なキャスティングが実現したことで、映画は伝説となりました。