くらし

新真打の芸名にちなんだ話をご披露。│柳家三三「きょうも落語日和」

  • イラストレーション・勝田 文

この春、初めての経験をしました。定席の真打昇進披露興行で、先輩真打として披露口上に並んだのです。

定席の興行で口上に並べるのは新真打の師匠のほかは「理事」という肩書のある噺家であることが我が落語協会では慣例です。私はそんな立場ではないのですが、新真打、玉屋柳勢さんの師匠が協会会長の柳亭市馬師匠。私は自分の師匠から落語の稽古をつけてもらったことがなく、一番たくさん噺を教わったのが市馬師匠で、いわば第二の師匠です。その筆頭弟子の柳勢さんは弟分のような親しさでつきあってきましたから、彼のお祝いの口上を述べるのはとても感慨深いものでした。

それにしても「玉屋柳勢」とは、皆さん耳慣れない変わった芸名と思われたことでしょう。それもそのはず、百年近く名乗る者なく途絶えていた名跡の復活なんです。「縁かいな」という有名な端唄の歌詞、

♪夏の涼みは両国の
 出船 入船 屋形船
 あがる流星 星くだり
 玉屋がとりもつ縁かいな

が由来となっています。両国の川開き、「たーまやー」のかけ声であがる花火の名前ですね。

実は十数年前、真打昇進が決まった私に「三三という名前を変えたほうがいい」と、この「玉屋柳勢」を勧めてくれたかたがありました。そのとき私は「変な名前だな」と、お断りしたんです。けれどこのたび新真打が看板を上げてみると実にいいではありませんか! 名前のとおり寄席の夜空に大輪の花を咲かせて、大勢のお客さんに落語日和を届けてもらいたいですね。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』1021号より

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