くらし

人生は、短いんだから、自分の楽しみぐらい、自分で面倒見るってこと――犬養智子(評論家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、自分なりの楽しみを見つける心得を読み解きます。
  • 文・澁川祐子
1979年1月25日号「『ムダの効用』がわかる女が増えてきた」より

人生は、短いんだから、自分の楽しみぐらい、自分で面倒見るってこと――犬養智子(評論家)

〈ムダな部分をどんどん削ってもいいものか〉という疑問を呈し、「ムダの効用」を説く企画。高度成長期を経た当時、〈必要な物以外買わない、家計簿はきちんとつけるといった、計画的かつ健全な生き方が好まれている〉と書かれており、ミニマリストが注目されるいまほど極端ではないものの、すでにムダを嫌う傾向があったのだとわかります。

その真逆を行く“ムダ”のすすめ。誌面では、ムダのある暮らしを実践している女性たちの声を紹介し、ムダな時間がもたらす精神的なメリットを示しています。

そのなかで、評論家の犬養智子さんは〈合理とムダは隣り合せで、どこまで合理にして、ムダを作るかということが大切だと思う〉と言い、〈自分を一個の人間として自覚することも、すごく必要ね〉と語りかけます。

ここでいう「ムダ」とは、世間一般では必ずしも必要とされていなくても、自分にとっては大切なもののこと。ゆえに自分にとって何が必要な「ムダ」かを判断することは、個人の価値観によるものであり、他人に左右されるものではない。そこで〈自分を一個の人間として自覚すること〉が求められるというわけです。

さらに、犬養さんは〈レジャーぐらい、自分の好きにできない人は人生も自由にできないといえるわね〉とも言い放ちます。今年のGWは、新型コロナによる自粛で楽しみにしていたレジャーを諦めたという人は多いでしょう。先の見えない日々だからこそなおのこと、自分を楽しませる新たな「ムダ」を見つけたいものだと、この言葉を噛み締めました。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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