〈ムダな部分をどんどん削ってもいいものか〉という疑問を呈し、「ムダの効用」を説く企画。高度成長期を経た当時、〈必要な物以外買わない、家計簿はきちんとつけるといった、計画的かつ健全な生き方が好まれている〉と書かれており、ミニマリストが注目されるいまほど極端ではないものの、すでにムダを嫌う傾向があったのだとわかります。
その真逆を行く“ムダ”のすすめ。誌面では、ムダのある暮らしを実践している女性たちの声を紹介し、ムダな時間がもたらす精神的なメリットを示しています。
そのなかで、評論家の犬養智子さんは〈合理とムダは隣り合せで、どこまで合理にして、ムダを作るかということが大切だと思う〉と言い、〈自分を一個の人間として自覚することも、すごく必要ね〉と語りかけます。
ここでいう「ムダ」とは、世間一般では必ずしも必要とされていなくても、自分にとっては大切なもののこと。ゆえに自分にとって何が必要な「ムダ」かを判断することは、個人の価値観によるものであり、他人に左右されるものではない。そこで〈自分を一個の人間として自覚すること〉が求められるというわけです。
さらに、犬養さんは〈レジャーぐらい、自分の好きにできない人は人生も自由にできないといえるわね〉とも言い放ちます。今年のGWは、新型コロナによる自粛で楽しみにしていたレジャーを諦めたという人は多いでしょう。先の見えない日々だからこそなおのこと、自分を楽しませる新たな「ムダ」を見つけたいものだと、この言葉を噛み締めました。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。