買うのも、読むのも、難しくありません。大人のための電子書籍入門。
撮影・土佐麻理子 イラストレーション・三東サイ 文・黒澤 彩
[interview]本棚ごと持ち歩いて、その時の気分で読める! 松尾たいこさんの電子書籍ライフ。
夫婦ともに大の本好きだというイラストレーターの松尾たいこさん。電子書籍愛好歴は、10年近くになる。
「専用リーダーとタブレットが主な読書ツールです。文字だけの小説などはリーダーで、カラーで見たいビジュアル本やマンガはタブレットで、というふうに使い分けています」
AmazonのKindleの場合、アプリを入れておけば複数のデバイスで本を共有できるので、そのメリットをフル活用。より身軽にしたいときはリーダーかタブレットどちらかを持ち出せばいいのだし、もし両方忘れてしまっても、ちょっと画面が小さいけれどスマホで読むという手がある。
というのも、現在、松尾さん夫婦は東京、軽井沢、福井の3拠点で生活していて、新幹線での移動が多いのだ。
「荷物が少ないに越したことはないですよね。そういえば、以前は旅先にたくさんの本を持っていくのが大変でした。夫なんて、3週間の海外旅行に30冊くらい持っていっていたかも。それが、デバイス一つで何百冊も運べるようになったわけだから、夢みたい! 電子書籍は、もはや私たちの3拠点生活の必需品です」
思い返せば、“紙の本だけ時代”は、旅先で読もうと厳選してきたはずのものが、いざ現地に着くと気分と違っていたり、買ったのを忘れて同じ本を2回購入してしまったり(電子書籍ストアでは、購入履歴が表示されるのでその失敗がない)。家の物を減らすために泣く泣く本を処分したことも……。だから今、一度は手放したけれど、また読みたい本を電子版で買い直すことも多いそう。その一方で、未読の“積ん読(つんどく)”も増えてしまうのが悩みのタネ。
「最近は、気になる本があったら、まずは試し読みのサンプルだけをダウンロードしておきます。後でやっぱり買おうと思ったらいつでも買えますし。反対に、読みかけでやめてしまった本とか、もう再読しないものはこまめに削除しています」
松尾さんのライブラリには、約300冊が保存されている。どうやって整理しているのだろう?
「けっこう試行錯誤しましたよ。歴史、小説といった大まかなジャンルごとのフォルダ以外に、好きな作家別のフォルダも作ってあります」
なるほど、自分の読書傾向を俯瞰する楽しさもありそうだ。
「あとは、全20〜30巻のマンガをまとめて購入したら、その作品だけのフォルダを作成。重さや収納場所を気にしないで大人買いできるのも、電子書籍ならではの贅沢です」
時と場合に応じてデバイスの設定を変えれば、いつも快適。
使ってみて気づいたメリットはほかにも。まず、画面の明るさを調節できること。毎晩、就寝前にベッドで読書するとき、控えめな明るさに設定していても読みやすい。周囲には光が漏れにくいので、隣で寝ている夫の睡眠を妨げることもなくなった。
「以前、ベッドサイドの灯りをつけていた頃は、よく『眩しい』って言われたんですけど、その問題もあっさり解決。暗い場所でも、周りに迷惑をかけずに読めていいですね」
文字のサイズや背景の色調を変えられるのもありがたい。電子版に慣れた今では、小さな文字がびっしり印刷されている昔の文庫本は読めずにギブアップしてしまうこともある。
「手元の視力が落ちて細かい文字が読めなくなったり、目が疲れやすくなると、読書から遠ざかってしまう人もいるんじゃないでしょうか。年齢のせいで本と出合う機会が失われてしまうなんて、もったいないです」
たとえ全機能を使いこなさなくても、買って読むこと自体はごく簡単で、しかも快適。大人世代にこそ電子書籍をおすすめしたいと松尾さん。
「もともと本が好きだけど、電子書籍のおかげでますます読書量が増えて、ちょっとした空き時間にも読むようになりました。SNSをなんとなくチェックするより、ずっといい気がします」
『クロワッサン』1019号より
広告