状況説明テクが問われるラジオ中継の難しさ。│ しまおまほ「マイリトルラジオ」
中継レポートって、うまく出来たら気持ちが良いだろうなあとラジオを聴いていて思う。伝えるべき情報、現場の様子、空気の臨場感をそのまま放送にのせられたら、すごく達成感があるだろうなあ、と。自分が今どこにいて、それは駅からどの方向に何分くらい歩いた所で、周りはどんな景色が見えて……そこからさらに状況説明。数分間の勝負。なかなかスリリング。
わたしが好きな中継は「安住紳一郎の日曜天国」内の「おでかけリサーチ」。週末のおでかけスポットやイベントを現場からリポートするのだが、リポーターの状況説明テクニックに心底感心しながら聴いてしまう。やはり安住アナの前で下手なリポートはできないと思うのだろうか……。
実はわたしもラジオ中継の経験者。これが本当に難しかった。目に入るもの全てを言葉にしようとすると散漫になり、ひとつのことに集中しようとすると状況がよくわからなくなる。スタジオとのやりとりもなんだかチグハグになって、焦っているうちにあっけなくタイムオーバー。
そういえば、電話口で道案内をするのもされるのも苦手だ。東西南北もわからなければ、距離感を掴むのもまったくダメ。「そこから東に50m行ったところに」なんて言われてもチンプンカンプンだ。
ラジオ中継がうまくなるヒントはそこに隠されているかもしれない。地図をきちんと読める人、方向感覚に優れている人はリポーターに向いていそうだ。と、この間迷子になった時に思いついた。
しまお・まほ●エッセイスト、漫画家。1997年『女子高生ゴリコ』でデビュー。著書に『マイ・リトル・世田谷』。
『クロワッサン』1015号より