くらし

南極生活で学んだのは、食材と環境を大切にすること。

“もったいない”を合言葉に、食品ロス削減のさまざまな試みが広まりつつある今、“無駄なくおいしくお得”な情報を集めました。
  • 撮影・黒川ひろみ
渡貫淳子(わたぬき・じゅんこ)さん●第57次南極地域観測隊調理隊員。調理師。母親の立場で初の調理隊員として南極地域観測隊に参加。帰還後、テレビ番組で紹介された「悪魔のおにぎり」が話題に。著書は『南極ではたらく』(平凡社)。

「食品ロスの削減については、南極に行って帰ってきてから、一生つきあわなければいけない問題だと思うようになりました」と、南極昭和基地で1年半、調理隊員として過ごした渡貫淳子さんは語る。

「観測隊にいると、洗濯やお風呂の入り方まで細かいルールがあっって。強要されることはなくても、あの環境にいるとみんな自然とそれが身に付いていくんです」

お皿ひとつ洗うにも、残ったソースや汁をペーパーでぬぐって予洗いした後に食洗機へ。基地では生ゴミも処理機にかけてから焼却、灰にして日本に持ち帰る。液体すら気軽にシンクに流せない環境なのだ。そのため、肉を焼いた時に出る汁を、渡貫さんはパックに溜めて次の料理に利用していた。

「鶏肉の味噌漬け焼きなら、生肉の周りについた味噌を、鉄板で焼いたあとの肉汁と一緒に、味噌ラーメンのスープに加えていました」

肉の旨味も活かせ、かつ生ゴミも減らすための工夫だ。そのように、日々コンパクトに暮らすことが当たり前になったという。

基地では、隊員30人分の朝昼晩の食事とおやつ、夜食作りを担当。もう一人の料理人“相方さん”とシフトを組んで、調理にあたった。

「日本に帰ってから、もう一つ食材を買い足せばあと1品できるという時には、その日はあえて我慢しています。そうすると家にあるものを使って、何か1品生まれるんですよ。缶詰、乾物、冷凍庫をまずチェックするようにします」

基地にいる間、隊員たちの30人分の食事をまかなっていた渡貫さん。食材はすべて事前に調達して持ち込む。生鮮食品は少なく、缶詰やレトルトと並び、冷凍した肉や野菜が貴重な食材となる。

「前もってメニューを決めているわけではないので、冷凍庫で食材と長時間向き合うことが多かったです。鶏肉の段ボールを見ながら『この部位が減ってないからここから崩していこう』という具合に」

シュラスコの肉汁は余さずカレーに投入。
鶏肉の味噌漬け焼きの汁は、当初カレーの予定を変更して、味噌ラーメンにリメイク。

備蓄が充分あっても、“なくなったらそれで終わり”という恐怖心は拭えなかった。だから、食材はほんの少しも無駄にはできない。

「切り干しやひじきといった半端に残った煮物は、刻んで朝ごはんの汁物にしました。餃子も刻んで、筍の水煮と一緒にスープにしたり。あとは2週間に1回のカレー当番の際に、余った食材を使っていました。サーバーに残ったコーヒーもコク出しになるなど、カレーは何でも受け止めてくれますよ」

〈南極観測隊のある日の朝食〉

(1)ソースをアレンジして、オリジナルトーストに。
少し残ってしまったソースはマヨネーズと混ぜて食パンに塗り、こんがりとトースト。シンクに流せないので、調味料も再利用。

(2)甘いきなこを使った、クリームサンド。
サンドイッチに塗っているきなこは、餅に使ったもの。砂糖を加えて甘くしていたので、クリームと混ぜてペースト代わりに。

(3)冷やし中華の具材は、サラダとして登場。
彩りもきれいなサラダ。これも実は前日のリメイク料理。冷やし中華の上にのせた野菜や薄焼き卵を使ったもの。無駄は一切禁物!

(4)カツサンドももちろん、前日の残りをリメイク。
朝は味噌汁にご飯のことも多かったが、この日の前日はチキンカツ。余りはもちろん、ボリューム満点のカツサンドとして、リメイク。

*商品や価格は時期により変動があります。

『クロワッサン』1014号より

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