「食品ロスの削減については、南極に行って帰ってきてから、一生つきあわなければいけない問題だと思うようになりました」と、南極昭和基地で1年半、調理隊員として過ごした渡貫淳子さんは語る。
「観測隊にいると、洗濯やお風呂の入り方まで細かいルールがあっって。強要されることはなくても、あの環境にいるとみんな自然とそれが身に付いていくんです」
お皿ひとつ洗うにも、残ったソースや汁をペーパーでぬぐって予洗いした後に食洗機へ。基地では生ゴミも処理機にかけてから焼却、灰にして日本に持ち帰る。液体すら気軽にシンクに流せない環境なのだ。そのため、肉を焼いた時に出る汁を、渡貫さんはパックに溜めて次の料理に利用していた。
「鶏肉の味噌漬け焼きなら、生肉の周りについた味噌を、鉄板で焼いたあとの肉汁と一緒に、味噌ラーメンのスープに加えていました」
肉の旨味も活かせ、かつ生ゴミも減らすための工夫だ。そのように、日々コンパクトに暮らすことが当たり前になったという。