くらし

「医療費払い戻し詐欺」被害者インタビュー、その巧みな手口とは。

いろいろ切り詰めて節約した大切なお金を、詐欺被害などで失ってしまったとしたら……。そうならないよう、まずは学びましょう。
  • 撮影・土佐麻理子 文・保手濱奈美 イラストレーション・村上テツヤ

払い戻しの手続きのはずが、いつの間にかお金を振り込まされて……。

詐欺の撃退には、自信があったんですけどね。(阿部さん)

阿部絢子(あべ・あやこ)さん●生活研究家、消費生活アドバイザーとして活動。薬剤師の資格も持つ。著書は『老いのシンプルひとり暮らし』(大和書房)など多数ある。今回、「自分の経験を詐欺被害の予防に役立てていただけたら」と語ってくれた。http://ayakoabe262.jp/

クロワッサンでもおなじみ、生活研究家の阿部絢子さん。消費生活アドバイザーの資格も持ち、誰よりしっかりしている阿部さんが、昨年、詐欺でお金をだまし取られたということで、編集部にも衝撃が走った。

「家の電話はいつも留守電にしていて、相手の名前を聞いてから出るようにしているんです。でも、その日は直前に知り合いと話していたので、その方が言い忘れたことでもあるのかと思い、留守電になる前に出てしまって……」

8月の暑い盛り。「少しぼんやりしていたのかも」という状況も重なって、詐欺の電話に対応してしまうことに。

医療費の払い戻しがあるという嘘の電話から詐欺は始まった。

手口はこうだ。“区役所の川上”と名乗る男からの電話で、’18年に医療費に関する法律の改正があり、3万6180円払い戻される、と。申請書が必要だが、阿部さんからは届いていない。申請期限は数日前に切れているものの、区役所の取引銀行と連携して、救済する、と言うのだ。その後、実在のメガバンクの“前田”と名乗る男から、近所のATMで今すぐ申請手続きを行えば救済できる、との電話を受ける。

「この時、私は『払い戻されたお金でおいしいものを食べよう』とうれしい気持ちで、誘導されるがまま。ATMの前に立ち、電話の向こうからの『この番号を押してください』といった指示に、何の疑いもなく従っていました」

実はそれは金額のボタンで、気づかぬうちに数回に分けて計199万円振り込まされていたという。さらに、「キャッシュカードが傷んでいるようで、申請ができないかもしれない。新しいカードはないか」と言われ、たまたま新しいカードを持っていたため、そちらでも同様の手口に乗ってしまった。

巧みな手口で誘導されるまま、気づいた時は残高がマイナスに。

「損害額は合計280万円以上。翌日、取り寄せていたかまぼこの代金を振り込もうと銀行に行った時に、残高がマイナスになっていたのを見て、やっと昨日のが詐欺だったと気づきました」

今度は振り込んだ先の銀行からも、詐欺に遭っていないかと電話、その勧めで警察に報告。警察署で取り調べを受け、顔写真を撮られたほか、自宅やATMなどで証拠写真も撮影された。

「自分は大丈夫だと思っていましたが、実際は驚くほど手口が巧妙。他人事と思わず、私のような経験をしないように、本当に注意してもらいたいですね」

警察に報告するため、詐欺と気づいた時にすぐメモを取って残しておいた。日時、起きたことなどを明確に。
被害の引き金となった自宅の電話。今は刑事さんの名刺を貼って、二度と詐欺被害に遭わないよう戒めている。

【だまされないための3カ条】

一、「私は大丈夫」と思わない。
その思い込みは捨てること。誰しも、うっかりすることや、魔が差すことがある。

二、自分の身は自分で守る。
詐欺対策用の電話に替える、普段、使わない口座のカードは持ち歩かないなど自己防衛を。

三、うまい話なんてないと肝に銘じる。
お金が戻ってくるなど、うまい話はまず疑う。それが知らない人からの連絡なら、なおさら。

『クロワッサン』1014号より

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