運転免許を取るべきか、いまだに考えあぐねる。もう四十路を過ぎているというのに。子どもの頃から都内に住んでいて、公共交通機関で大抵の場所へ行ける。大きな荷物があればタクシーを、行きにくい場所までは自転車で。車を使うとかえって時間も費用もかかる、そう言って家族の誰も運転免許を持とうとしなかった。
しかし、わたしは諦めきれないのだ。フトした瞬間に、ある妄想が頭をよぎるとまっ先に自動車教習所のホームページを見てしまう……。ある妄想とはラジオをかけながら、自分が車を運転しているという姿。
子どもとどこかへ行くのもいいだろう、年をとりつつある両親のことを考えれば必要かもしれない。年に1、2度行くIKEAにだって免許があれば思いついた時にフラッと行ける。ただ、それらは免許が欲しい理由にはならなかった。便利ではあるけれど、自分も「便利な人間」になりそうで。特に子どもには「母親兼運転手」と思われてしまうのでは、という危惧もある。しかし、街で時々車内で熱唱している人を見かけると無性に羨ましくなる。わたしならラジオを聴きながら、ひとりでツッコミを入れたり合いの手入れながら運転したい。自分だけの小さな部屋にラジオを響かせ、それが街中を走ったり、時には海へ出かけることもできるなんて最高ではないか……!
車を持つまでの費用が、果たしてその妄想を叶えるほどの価値に値するかはわからない。とりあえず今日も、脳内でラジオドライブ。愛車の赤い、ミニクーパーで。