専業主婦から、一歩足を踏み出した人の証言からなる「脱専業主婦入門」シリーズ。その手段の一つとして「投書」が取りあげられるあたり、雑誌カルチャーが最盛期だった1970年代らしいテーマです。
導入部には、昨今は家計簿をつけるだけでなく、<ペンを取って、机に向かい、自分の考えていることを文章にして整理する>主婦が増えているとあります。投書に熱中している人たちの声を読むと、みな謝礼金などの金品が目的というよりも「自己表現をしたい」「社会とつながりたい」という気持ちが強いことがうかがえます。
子どもの頃に作文が好きだったと語る、今回の名言の発言者もその1人。
最初に採用された投書は、終戦直後の不況のなかで、貧しかった家庭の状況を正直に、あからさまに書いたものだったといいます。以来、仲間を求めて投書研究会に入るほど、投書に夢中に。コツは<ちょっとでも飾りっ気のある言葉にしちゃうとダメです>と語ります。
いまならさしずめ、パソコンに向かってキーボードを叩き、ブログやSNSで発信するといったところでしょうか。「本音が大事」というのも、いまの「共感の時代」を先取りしているかのような発言です。結局のところ、時代が移り変わっても「書く」ことによって自らの思いを表現したい、という欲求は根強いものなのだと思わされる内容でした。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。