文は口に出すより、自分の本音、本当の気持ちが伝わるんです――K・Iさん(主婦)
1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、40年あまり前に書いて発信していた女性たちの声を聞いてみましょう。
文・澁川祐子
文は口に出すより、自分の本音、本当の気持ちが伝わるんです――K・Iさん(主婦)
専業主婦から、一歩足を踏み出した人の証言からなる「脱専業主婦入門」シリーズ。その手段の一つとして「投書」が取りあげられるあたり、雑誌カルチャーが最盛期だった1970年代らしいテーマです。
導入部には、昨今は家計簿をつけるだけでなく、<ペンを取って、机に向かい、自分の考えていることを文章にして整理する>主婦が増えているとあります。投書に熱中している人たちの声を読むと、みな謝礼金などの金品が目的というよりも「自己表現をしたい」「社会とつながりたい」という気持ちが強いことがうかがえます。
子どもの頃に作文が好きだったと語る、今回の名言の発言者もその1人。
最初に採用された投書は、終戦直後の不況のなかで、貧しかった家庭の状況を正直に、あからさまに書いたものだったといいます。以来、仲間を求めて投書研究会に入るほど、投書に夢中に。コツは<ちょっとでも飾りっ気のある言葉にしちゃうとダメです>と語ります。
いまならさしずめ、パソコンに向かってキーボードを叩き、ブログやSNSで発信するといったところでしょうか。「本音が大事」というのも、いまの「共感の時代」を先取りしているかのような発言です。結局のところ、時代が移り変わっても「書く」ことによって自らの思いを表現したい、という欲求は根強いものなのだと思わされる内容でした。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。
澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。
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