くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】人間関係に消極的な性格でママ友ができません。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回はいじめられた経験が尾を引いて、ママ友が作れないと悩む二児の母からの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>
ママ友が出来ず悩んでいます。
今住んでいる土地は夫の転勤で来た街で、知り合いは誰もいません。
子供を連れて子育てセンターや公園などにも行きますが、自分から他のお母さんに話しかけたりなど出来ず、そうこうしているうちにグループが出来上がり、ひとりぼっちです。
中学の時いじめられた経験から、人間関係に消極的になったと自分では思っています。自分から人に話しかけられない、他人にどう思われるか気になる、誰とも目を合わせないようにする……等の私の態度では、友達などできっこないとわかっているのですが、どうしたらこんな自分を変えられるでしょうか。
(かまぼこ/女性/ 32才専業主婦です。0才と4才のこどもがいます。)

山田ルイ53世さんの回答

「ママ友が出来ない」とお悩みのかまぼこさん。
「中学の時いじめられた経験」から「人間関係に消極的になった」と自己分析されていますが、旦那さんと出会って結婚し今では2人のお子さんもと、家族という非常に濃い”人間関係”を築き上げているわけで、そこまで苦手意識を持たなくても良いのかなと思います。

「他人にどう思われるか気になる」というのは、筆者も相談者と似たような時期があったのでよく分かります。
ただそればかりだと、もう疲れてしまう。
人がどうこうではなく、自分に集中する。
その方が人生の効率が一番良いのだとの考えに至り、人目を気にするのはある程度やめました。
大体、人の頭の中など窺い知ることは出来ません。
結局のところ、「この人から○○って思われるんじゃないか? あの人は△△と思っているだろう!」と相談者ご自身が”思っている”だけのこと。
不毛です。

とは言え、知り合いの居ない見知らぬ土地に来て、ゼロからのスタートというのは確かにしんどい。
6年間の引きこもり生活の後、地方の大学へ潜り込んだとき、その後、夜逃げ同然で上京してお笑いを始めたとき……馴染みの無い土地での心細さ、新規のコミュニティーに入り込んで行く難しさは、筆者もそれなりに経験しておりお気持ちはお察しします。
ここは、”ママ友”と限定せずに、よく行くスーパーのレジ係の人と軽く会釈をするようになったとか、旦那さんの同僚ご夫婦と食事に行くとか、身近な所から少しずつ「自分が暮らす街」という実感、テリトリーを広げていけば良いのではないでしょうか。
とにかくコツコツが大事かと。

そもそも、「○○友」とは、「○○するときの人間関係」ということ。
“ママ友”であれば、行動を共にする理由は基本的に、「同じ学年、年代の子を持つ母親同士」という(だけの)ことです。
勿論、そこからかけがえのない友情へと育っていくケースもあるでしょうが、それを前提、ゴールにするべきではないと思います。
無二の親友、生涯の友を探すわけではないのです。
ハードルを本来の”ママ友”の位置まで下げましょう。

「自分から人に話しかけられない」とありますが、焦る必要はありません。
上のお子さんが4歳。
ということは、もう幼稚園児でしょうか。
この先、幼稚園や小学校の様々な行事で、否応なしに他のママ達と関わることになり、おのずとキッカケは訪れると思います。

今はまず、「子供を前面に押し出す」ということを心掛けてはどうでしょう。
地方のショッピングモールやお祭りのお笑いステージでは、出番を終え控え室に戻る道中、
「ほらー、髭男爵さんだよー?」
などと小さなお子さんを連れたママやパパに声を掛けられ、サインを書いたり、写真を撮ったりすることがよくあります。
彼らは決まって、自分の前に子供を立たせ、その背中越しに、
「ほらー、○○ちゃん?”こんにちはー”って!」
「○○ちゃん、ちゃんとお礼を言いなさい?”ありがとー”は?」
と話し掛けてくる。
しつけの一環、子供に社会性を教える等々、先方にも意図があるのは重々承知ですが、
(いや、まず自分が”こんにちはー”言えよ!)
と意地の悪いツッコミが頭を過らぬでもありません。
いや、筆者も2児の父親。
我が子を使った”腹話術”には、覚えがあります。

たまに娘を連れ公園に行けば、ママ同士が、其々子供を前面に押し出し、
「○○ちゃんが”遊ぼー”って!」
「良かったねー!”良いよー”だって!」
とコミュニケーションを取っているのを目にします。
ポケモンバトルさながらですが、要はそういうこと。
誤解の無いよう断っておきますが、決して皮肉ではありません。
思う存分子供の力を借りて、「ママ友をゲットだぜ!」で良いと思うのです。

その際、少々しんどいですが、ニコニコと笑顔をキープすることも忘れずに。
相談者同様、子供連れのママ達は警戒心が強い。
「挙動不審」は避けた方が得策。
芸人という社交性が求められる仕事に就きながら、実は筆者も人と目を合わせるのが苦手です。
なので、一瞬相手と目を合わせると、ニコッと笑い目を細める振りをして瞑っています。
視線の交差、やり取りから一時エスケープするためですが、笑顔なので相手に与える印象が悪い筈もなく、一石二鳥。
お勧めです。

山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。
⇒ 公式ブログ

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