猫が出す“とんち”を解く!?│山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
猫ちゃんの可愛いイラストに導かれて始まる癒やし系クイズアプリ!?
「くび」という字が輪になって“首輪”、3が落っこちてきて“落下傘”、升の字がカットされていて“マスカット”など、最初のうちは可
愛い問題が続くのだが、段々難しくなって、結局は普通のクイズに……。
額縁の中に「は」の字があって“画伯”、家のイラストの中に「セイ」で“セイウチ”、「0>?>5」という問題は全体で何かを表しているのかと思ったら、「?」が何かを当てる問題で、答は2。つまりジャンケンの指の数を表していたわけ。
これ、とんちクイズですよね?
私、苦手なんです。とんち系のクイズは出題者と感覚が似てないと正解できないのですよ。途中でつまずいて、先に進めません。「花粉」の上にナイフのイラストで答が“缶”って、分りますか?
完全にドツボにはまってしまいました。私は「こちょねこ」とか「ねこあつめ」みたいな、可愛い猫がいっぱい出てくるクイズだと思ってたのに、猫、関係ないじゃない!?
裏切られた感が押し寄せてくる。
去年野良から保護した黒猫タマは、元は飼い猫だったようで避妊手術までしてあった。凶暴だが根は甘ったれで、抱っこすると手を舐める。やっと心を開いてくれたのかと喜ぶと、いきなり噛みついたりする。
私は裏切られた感で悲しくなるが、クイズと違って猫は途中でやめるわけにいかない。いつの日かタマが素直な心を取り戻してくれると信じ、猫可愛がりする日々です。
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。近著に『夜の塩』(徳間書店)。
『クロワッサン』1009号より
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