秋のカルチャー案内【落語】。
撮影・岩本慶三 文・一澤ひらり
話芸を間近で。 この秋は寄席で落語初体験を!
三三さんに、寄席を案内してもらいました。
お気軽さが寄席の魅力。
新宿三丁目の繁華街にあって、築70年余の木造建築が江戸情緒を漂わせる新宿 末廣亭。大きな幟旗(のぼりばた)、軒先に連なる提灯、独特の寄席文字の看板が趣を宿す昔ながらの老舗寄席だ。
「私が初めて末廣亭に来たのは、小田原に住んでいた中学1年生の時。千葉にいた落語好きの祖母と新宿で待ち合わせて入ったんです。トリは古今亭志ん朝師匠で、面白さに圧倒されました。実はその後、噺家になった初高座もここだったんですよ」
と話すのはいまや独演会のチケットが入手困難、本誌の連載「きょうも落語日和」でもおなじみの若手本格派のホープ、柳家三三さん。
「寄席ほど気楽にライブで笑える場所はないと思うんです。一年中ほぼ毎日、昼も夜もやってますから、好きな時にお笑いを楽しめます。噺家のほうだって高座にかける演目は客席の雰囲気やネタ帳を見て直前に決めるんですから、まさにライブ感満点なんです」
落語だけでなく、漫才や奇術、紙切り、曲独楽(きょくごま)といった落語に色を添える“色物”を楽しみながら、トリをつとめる噺家の登場に向けて盛り上がっていく。演者たちの見事な連携プレーで寄席ならではの雰囲気ができあがる。
「寄席は独演会やホールの落語会などとは違って、噺家の肩の力がほどよく抜けていて、お客さんと一緒に空気をつくっていくんです。どうぞ、お気軽にいらしてください。入場券は当日券のみで全部自由席。こう言っちゃナンですが、いつ来てもまず座れます(笑)」
新宿 末廣亭
1946年(昭和21年)に再建された東京で唯一の木造建築の寄席。長押の釘隠しや欄間の透かし彫りなど精緻な細工も見どころ。新宿区の「地域文化財」に認定されている。昼の部(12時〜16時半)と夜の部(17時〜21時)に分かれているが、特別興行以外は昼夜通しで見られる。座席での飲酒はできないが、飲食自由。
『クロワッサン』1005号より
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