くらし

一体いくつあるんだろ、太郎さんの引き出しは?│金井真紀「きょろきょろMUSEUM」

若い頃は「仲良くなりたいな」と思った相手を質問攻めにしたものだ。出会った初日に相手のすべてを把握したいと躍起になった。同時に、自分の手持ちの話も全部開示しなきゃと息巻いて、変なテンションでしゃべり続けたり。あぁ、思い起こせば恥ずかしきことの数々((C)寅さん)。

青かったお尻はすっかり熟し、今では「ゆっくり仲良くなっていく」道を選ぶようになった。親しい間柄になってから、

「おー、そんな一面を持っていたのか」なんて新発見がある方が楽しい。飽きがこない付き合いこそ、人生の味わいだ。

さて岡本太郎さんを思う時、なんだろう、この飽きなさ加減は!?とびっくりする。わたしにとって太郎さんの第一印象は、ご多分に洩れず「太陽の塔」であり、テレビコマーシャルでの「芸術は爆発だ!」の叫びであった。そのあと「坐ることを拒否する椅子」が好きになり、縄文の本に触れた。でもそれは太郎ワールドのほんの入り口だった。

わたしが沖縄に行くと、さとうきび畑の向こうに太郎さんが立っている。パリに行くと、モンパルナスのカフェで太郎さんがワインを飲んでいる。最近メキシコに興味があるのだが、太郎さんは「やっと気づいたか。待ちくたびれたよ」みたいな笑顔を向けてくる。なんだよ太郎さん、どこにでもいるじゃんか……。

今回の展覧会は、20年分の企画展をギュッと凝縮したもの。太郎さんの無尽蔵にある引き出しを覗くことができる。あぁ、この人のことは一生かかっても把握できないなぁ。

岡本太郎美術館20周年記念展
『これまでの企画展みんな見せます!前期/岡本太郎・縄文から現代へ』

川崎市岡本太郎美術館(神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-5 生田緑地内)にて10月14日まで開催中。TEL.044-900-9898 9時30分〜17時 月曜(9月16、23日、10月14日を除く)、9月17、24日休館 料金・一般1,000円

金井真紀(かない・まき)●文筆家、イラストレーター。最新刊『虫ぎらいはなおるかな?』(理論社)が発売中。

『クロワッサン』1005号より

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