秋の夜長、夢中になって碁を打つ家に、これまた碁が好きな泥棒が入る……『碁泥』。十五夜の晩に碁に夢中になったがために大金を紛失し、大切な友人との仲に亀裂が生じて
……『柳田格之進』。釜茹での刑で命を落とした大泥棒・石川五右衛門の末裔が、釜が仇と、十五夜の晩に豆腐屋の大釜を盗む……『釜泥』。どれもが大笑いするネタではなく、“クスリ”とおかしみがあったり、涙ありの人情噺であったり、まあどちらかといえば地味な噺が中心です。
さつま芋を扱った落語(『芋俵』や『真田小僧』)もあるのですが、秋のネタかと問われると……はっきりしないのが本当のところ。
よく落語会の企画で「四季の噺をテーマに演目を決めましょう」なんて提案があるんです。一度、二度はよくても、回を重ねると大抵は「秋の落語」がネックになって行き詰まります。
とはいえどことなく風流を感じさせる秋にのんびり、あるいはしみじみと「落語日和」。これはほかの季節にはない味わいですよ。