広沢 飲食店も、店主の個性が強い小さい店のお気に入りを、みんなはそれぞれ持っています。例えば「自分のちゃんぽんはここ」というのがある。
石井 屋台もそうね。夕方になると続々と開店の準備をしている様子は福岡らしい風景です。
広沢 福岡は夜が長いですよね。次に連れていかないと失礼っていう感覚があるのかなっていうくらい、必ず“次の店”がある。3軒目にちょうどいいような面白い店もどんどん増えていて。
石井 飲食店ももちろんだけれど、それ以外の分野でも、福岡だけの面白い店がたくさんありますよね。『krank / marcello(フランクマルチェロ)』や『LIGHTYEARS(ライトイヤーズ)』(*3)とか、どこも店主の個性に溢れていて、わざわざ訪ねたくなる。
広沢 あの規模感で東京で出店しようとするとけっこう大変ですし、そもそもやっている側が東京に出そうと思っていないのでは? それこそ物を買うだけならネットでポチッとすれば済む話だけれど、そうじゃなくて、“聖地に行きたい”というように、“この店で買いたい”という思いが生まれる。福岡なら「周りに美味しいごはん屋さんがあるな」と“自分ツアー”を組むイメージもしやすいんですよね。
石井 一点集中じゃなくて、そうやって広がっていくのがいいですよね。広沢さんのお気に入りはどこ?
広沢 セレクトショップ『TERCEIRO(テルセイロ)』ですね。浅岡陽子さんの「YAA!!」というブランドの服がすごく素敵で。私は1階のスペースで月に1回料理教室をさせてもらっています。
石井 港にあるお店ですよね。私は“界隈を作っていく”っていうのがキーワードだと思っているんですよね。流行っているエリアじゃないとだめということはなくて、自分がよいと思った場所で自分がよいと思ったことをやって、その勢いが周辺に伝染していくような……。そんな空気が福岡全体に広がっていくといいなと思っています。
*3 『krank / marcello』は、家具や洋服、雑貨を扱うセレクトショップ。『LIGHT YEARS』は世界から集めたキルトやラグ、雑貨を扱っている。