くらし

かわいいの奥にある5%の隠し味とは?│金井真紀「きょろきょろMUSEUM」

中学生の頃、仲良し4人組でミスタードーナツへ行って、スタンプを集めて、景品のオサムグッズをもらっては喜んでいた。よく覚えているのはアルミホイル。かわいい絵入りのアルミホイルを4等分して、シワにならないようにそーっと持ち帰ったっけ。「仲良し4人組」と言ったけれど、当時のわたしはいじけていた。物知りでセンスがいい3人のことをいつも眩しく見上げていて、自分だけ何も知らないダサい子だと思い込んでいた。原田治さんのことも3人に教えてもらった。だからオサムグッズにはしゃぐ時、ほんの少し「好きなふり」も混ざっていた。

今回、久しぶりに原田さんの世界を堪能した。かわいくて、都会的でつねに朗らか。そうだそうだ、あの頃仲良しだった3人もこんな感じだった!と一気に懐かしさが押し寄せる。イラストレーションの原画、ロゴ、ブックデザイン、コマーシャルのキャラクター、グッズ……。ニコニコしながら会場を巡っていると、原田さんのことばが掲げられていた。「ぼくが考えた『可愛い』の表現方法は、明るく、屈託が無く、健康的な表情であること。そこに5%ほどの淋しさや切なさを隠し味のように加味する…」

今思うと、仲良し4人組のそれぞれが、どこかにいじける気持ちを抱えていたのかもしれない。毎日ゲラゲラ笑っていたけど、「5%ほどの淋しさ」もちゃんと知っていた気がする。わたしは「原田治が好きなふり」をしていた時代を愛しく振り返りつつ、一つだけグッズを買った。

『原田治 展 「かわいい」の発見』
世田谷文学館(東京都世田谷区南烏山1-10-10)にて9月23日まで開催。幼少期のスケッチや1970年代の雑誌イラストをはじめ、広告、各種グッズなど没後初の大規模な展示会となる。 TEL.03-5374-9111 10時〜18時 月曜休館(祝日の場合は翌火曜休館) 一般・800円

金井真紀(かない・まき)●文筆家、イラストレーター。最新刊『虫ぎらいはなおるかな?』(理論社)が発売中。

『クロワッサン』1004号より

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