大正13年生まれ、94歳。「いのちのスープ」で有名な料理家・辰巳芳子さんはまた、「生ハムを日本で初めて成功させた人」でもある。
「風味といい、熟成の味わいといい、(生ハムは)豚肉料理の中で、最もおいしいと思っています。不思議ですね、多くの業者がイタリア人を招聘してトライしたが完成できなかったのに、日本人で、女の私が、初めて成功させた。スペインから訪れた人たちも、日本人がこんな生ハムを作れるのかと、賞賛半分、畏れ半分でしたね」
イタリアで初めて生ハムを口にしたのが43歳。15年かけて製法を完成させ、請われて大分・久住の業者に伝承していたが、その後、廃業。誰も「ハモン・クルード・ア・ラ・タツミ」を口にすることができなくなっていた。「もう一度食べたい」「あの製法を伝承すべき」と、惜しむ声があちこちから上がり、東京大学、早稲田大学の研究者とシェフを巻き込んでのプロジェクトが3年前から再開されたというのである。