「これは切手、レースの切れ端。刺繡の残り糸もこうして箱に入れておく。テープは失くさないよう、リボンでまとめて。これ全部、手仕事の道具です。捨てるものがなくて困っちゃいますね」。“おすそわけ名人” と名高いミスミさんのアトリエ兼自宅に、今日はラッピングのコツを教えてもらいに訪れた。目の前で、色も素材もとりどりの紙や布、糸、リボンたちがミスミさんの手で「形」になっていく様子は、まるで魔法を見ているかのようだ(仕上がりは上の写真でご覧あれ)。
「包んだり、巻いたり、袋に入れたり。ラッピングって、贈る相手のことを思って作る過程そのものが愉しいんです。わくわくしてくれるかなとか、開けたとき驚くかなとか想像しながら。ほら、白い紙に消しゴムを使ってスタンプを押すだけで、オリジナルの包み紙になるんです。ポンポンと押してみてください」
あ、はみ出しちゃってますが!
「大丈夫です。思いが溢れてはみ出しちゃうことって、あるじゃないですか。すれたり、かすれたりしても、その偶然の形のほうがあたたかみがあるし、私は愉しいと思うんですよね。……そういえば、小学校の図工の先生が、画用紙からはみ出して絵を描くと『よく出来た!』とほめてくれて(笑)。あれが、私の手仕事の原点かもしれませんね」
今も、まっすぐ切るのは苦手で、手でちぎるほうが好き、と笑うミスミさん。いとおしい作品に囲まれて、肌も笑顔もつやつや、幸せそうなのである。